コンテンツの物語化について

​​

前口上

​​学生の頃、暗記科目が苦手でした。

​​​​特に日本史は、個人的な興味が全くなかったこともあり、誰の乱だか誰の変だかも一切覚えられないような状況。文系学生にとって歴史科目がダメというのは致命的で、担任の先生も思わず頭を抱えるほどでした。

​​

51tUoAOjPcL._SX346_BO1,204,203,200_[1]

引用:​​amazon
当時使っていた教科書。見るだけで胃もたれがすごい

​​​​このままではいけないと思い、隣の席のA君に助けを求めました。

​​A君は他教科の成績こそまるで振るわない男でしたが、日本史においては飛び抜けて優秀な成績を残していました。そんな彼に、私は藁にもすがる思いで聞きました。

​​「どうしたら日本史の用語を暗記できるようになるの」

​​するとA君は不思議そうな顔で答えました。

​​「日本史を暗記しようと思ったことはないなあ。ていうか、日本史って要するに物語でしょ?ちゃんとストーリーが追えていれば、勝手にキーワードはついてくるから」

​​

​​物語化によって生まれる擬似体験

​​​​何かを学習する、あるいは、何かを表現するにあたって、物語というフォーマットは有効です。一つのドラマを見るエンターテイメントとしての形を取ることで、無理なく知識を吸収/表現することができます。

 

51x7aIoXwlL._SX351_BO1,204,203,200_[1]
引用:amazon

​​経営コンサルタント・竹内 謙礼さん著「検索刑事」は、SEO(検索エンジン最適化)をテーマとしたミステリー小説です。主人公である新米刑事が、ある事件をきっかけとしてGoogle検索で1位を取れるWebサイト作りに奔走する……という、なんとも珍妙な物語です。

​​初心者向けのSEO解説本はいくつもありますが、この本の分かりやすさは図抜けていると思います。それは物語仕立てだから取っつきやすい、という理由だけではありません。

​​物語の主人公は、SEOに関しては全くのド素人。刑事なので当然です。
​​彼女のもとに届いたのは、「羽毛布団」というキーワードで1位を取れ、さもなくば天誅が下るという脅迫状。サイバー課にも協力を断られるなか、持ち前のバイタリティから闇雲に行動を起こしますが失敗ばかり。しかし、瀬尾という天才イケメン高校生(という設定はさすがにエンタメが過ぎるとは思いますが)の導きによって事件は解決に向かいます。

​​​​さて、お分かりでしょうか。
​​これは擬似的に、一般企業の担当者がWeb制作会社に依頼するまでの流れを表しています。

​​​​まず主人公の新米刑事、これは企業担当者に当てはまります。
​​脅迫状はさしずめ上司からの指示でしょう。不条理なところがぴったり共通しています。
物語のなかで新米刑事が起こす失敗は、企業担当者がWeb制作を依頼するときに陥りがちなミスばかり。これはつまり、企業担当者が物語を通じて失敗例を体験できるような作りになっているのです。
​​事件を解決に導く瀬尾の役割は、優秀なWeb制作会社を指しています。彼のような人間に出会えるか=SEOをきちんと理解しているWeb制作会社に出会えるかが、Web制作においてどれだけ重要かを示しています。
​​ちなみに瀬尾=セオ=SEOです。なんというか、その、そういうことです。

​​

​​物語化のメリット、デメリット


​​物語というフォーマットを採用したビジネス書は今や数多くあります。
​​ベストセラー書籍である「もしドラ」や「嫌われる勇気」などはその代表作です。

​​それって紙媒体の話でしょう、と思う方もいるかも知れません。
実際そんなことはなく、Web媒体でも物語形式のコンテンツが出現しています。それどころかWebメディアの運営において、連載にしやすいというメリットもあります。
​​Webマガジン・コフレに連載されていた「ランチ酒」は、様々な街の「昼飲み」を取り上げながら一人の女性の人生を描いており、書籍化もされています。

​​ 

image_preview[1]

引用:コフレ

​「ランチ酒」は敢えて一話完結形式にしていることで、途中から読み始める読者への負担を下げています。
色んな意味で話題を呼んだ「東京OL図鑑」なんかも同様ですね。近年のテレビドラマ、「アンナチュラル」や「コンフィデンスマンJP」でも取り入れられている手法です。

​​このように物語形式のコンテンツには多くのメリットがありますが、一方でそれを作る難しさは十分理解しておく必要があります。
​​それもそのはず、何の縛りもなくシナリオを描くことすら難しいのに、キャラクターに明確な意味を持たせて物語を展開させるのは並大抵の技術では出来ません。

​​​​また、物語はどうしても「遠回り」な表現になってしまいがちです。
一つの言葉の意味を伝えるのに、解説書であれば3行で済むことも、物語では「いつ/どこで/だれが/だれに/どんなふうに」伝えているかを示さなければならず、効率的とは言えません。
この記事の「前口上」を読んでみて下さい。あれだけ長々と書いていながら、伝えたいことは「用語の暗記は物語で覚えるといいよね」ということだけ。地獄かよ。

​​とはいえ、上手くやれば多くのファンを獲得できる手法ではあることは確かです。
商品やトピックについて、普通に伝えても興味を持ってもらえないかも知れないなと思ったら、物語化して表現することを検討してみてはいかがでしょうか。

​​