大停滞(タイラー・コーエン著)

1970年代以降、世界経済の成長は減速していて、その理由は産業革命以来の成長の源泉だった「容易に収穫できる果実」――つまり、無償の土地、イノベーション、未教育の子どもたち――がすでに食べつくされたことにある。というのが、本書の中心となる論旨だ。
産業革命以来、イノベーションと経済成長が永続しているかのようにわれわれは錯覚しているが、実はイノベーションは40年前から停滞期に入っていて、成長をけん引する革命は起こっていない。インターネットは唯一の例外と言える大きなイノベーションだが、残念ながらインターネットは大きな雇用を生み出さず、人々を豊かにするイノベーションではない、というのが著者である経済学者タイラー・コーエンの主張だ。
(※彼はネットに疎い人ではなく、むしろネットが大好きらしい。同書もまず電子書籍としてリリースされた)
彼によると、2008年来の世界的な金融危機も、その本質的な背景はより長期的な経済成長の停滞にあるのだということになる。
これらのきわめてシンプルかつセンセーショナルな主張は、米国で発表された直後から当然ながら大きな話題となり、論争を巻き起こしたそうだ。僕も、なるほどーそういえばそうだったのかも!と目から鱗が落ちる的な部分と、うーんどうなんだろうと腑に落ちない部分と両方あった。確かなのは、間違いなく面白い本であり(しかも平易で短くてすぐ読める)、議論の入り口になる本(つまりネタ?)だということ。
「容易に収穫できる果実はすでに食べつくされた」というテーゼは素晴らしくキャッチーだと思う。(川崎和哉)

大停滞
タイラー・コーエン 若田部 昌澄
4757122802