「トラムのあるダウンタウン」に繰り出したい

こないだ鹿児島に一瞬行ってきたのだけど、やっぱり路面電車(or LRT or トラム)のある街って魅力的だ!と思った。鹿児島市街の滞在時間が3時間以下という弾丸ツアーだったのでたった2区間だけだったけど、初めて鹿児島の路面電車に乗れてうれしかった。
路面電車は、それもLRTと呼ばれる新しい路線はとくにだが、都市の郊外化・クルマ社会化を防いで、再集中化・コンパクトシティ化する上で重要な役割を果たすとされていて、なので都市の再開発の一環で導入されることがヨーロッパを中心に増えている。日本だと有名なのが富山市のケースだ。
もちろん万能薬なわけではないだろうし、実際いろいろ問題もあるらしいのだが、これはすごく卑近な実感として、路面電車が街を走ってるとなんだかその街のことが好きになるのだ。身近になるというか、愛着を持ってしまうのだ。
フランスのモンペリエという街に初めて行った時にも、高知に初めて行った時にも感じたことだ。地下鉄だとこういう感じはない。
なんなんだろう。街の広がりがカタマリとして一体感を持って意識されて、有機的に感じられるんだろうか。
多くの地方都市で郊外に巨大なモールが出来ていて、リトル東京的にどこもおんなじブランド、おんなじ飲食店が入っている。最近はそれが大都市のど真ん中まで波及して、主要ターミナル駅周辺がモール化している(三浦展が「都市のイオン化」と呼んでいる現象)。僕は横浜の港北ニュータウンに比較的近いところに15年くらい住んでいて、あちこちがモールだらけになっていく過程を見てきたのだけど、そんな東京近郊モールと同じものが、地方都市郊外にも、そして都会のど真ん中にも出来ているのだ。
モールは便利。なのは事実だと思う。でもそのせいで、東京の街の魅力が少し薄くなった気がしている。15年ぐらい前まで、横浜から渋谷へ出ていく価値は十分すぎるほどあった。渋谷には横浜にない店がたくさんあったからだ。でもいま、横浜になくて渋谷に行かないといけない店ってどれくらいあるんだろう(僕が年寄りになって知らないだけという側面はあるにしても)。ちなみに僕は、センター北でも渋谷でも、同じブランドストアで服を買う。同じセルフのうどん屋でお昼を食べる(丸亀製麺所)。週末ならセンター北だし、平日なら(職場があるから)渋谷という違いだけだ。
ユニクロと無印とマクドナルドに象徴されるようなチェーンストアの洗練・進化が行きついた結果という言い方もできるだろう。
こうなると、いったい都市って何? 街って何?という気持ちがしてくる。街が市場であると同時に、コミュニケーションを行う社交場であり、新しい情報を送ったり受け取ったりするメディアであり、そこから新しい流行や商売や思想や音楽や芸術が巻き起こったりするという図は、もう本当に幻想に近くなってきているんじゃないかとさえ思えてくる。
かつて街が持っていたこういう機能は、どんどんネットに移ってしまって、街は、中央化・最適化されたマーケティングと流通のインターフェイスでしかなくなり始めている。街という巨大なデジタルサイネージが、全国でリアルタイムに同じものを送出している。極端にいえば、そんなイメージが目に浮かぶ。インターフェイスでしかないのなら、わざわざ街に行かなくても家にPCがあるし、ポケットにはiPhoneだってある。
なんだか大げさな展開になってしまったが、こういう街のバーチャル化に抵抗する動きの象徴として、僕の中では路面電車が位置している。もしかしたら街がもっとも面白かった時代は20世紀で終わってしまったのかも知れないが、街からなにかが生まれる予感を、楽しいことが始まるかもしれないときめきを、路面電車から感じるのだ。
ノスタルジーではなく、そんな街をもういちど取り返せたらいいのにと思う。まず僕自身、もっと街に出かけないとなー。
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