第7回 radikoがradioを凌駕する日

どうせ連載タイトルなんて誰も気にしてないので、しれっとラジオの話題を。
東京近郊・大阪近郊限定での話ではあるが、PCでラジオを聴けるサービス「radiko」が3月から(試験配信という形で)運用を開始している。コンテンツとしては「地上波ラジオ番組」であっても、システム的には「インターネット」になるわけで、へい社の社長は「今まで独占事業だった電波での配信がネットに乗っかるということは、形式上は他のネットコンテンツと扱いが並列になってしまうわけで、それはラジオ的には自分の首を絞めていることになるのでは?」みたいなことを言ってたのだけれど、俺はむしろ逆じゃないかと思っている。
ラジオ広告はしばらく前からインターネット広告に売上高を抜かれてしまっているのだが、それは「広告メディア」としての衰退であって、「コンテンツ」としての衰退ではない。表現力に優れたテレビCMやネット広告に比べて、ラジオCMは「音声のみ・20秒」がCMの基準。スポンサーとしてはそりゃ出稿を控えるのは当然だろうと思う。
とはいえ、「TBSラジオ『JUNK』をはじめ、ラジオには面白い番組がゴロゴロ転がっている。まだまだラジオには可能性はある。出稿は少なくなったとしても、まあ制作費も安いし」というのがラジオファンに共通した認識だった。
まあ、要はたかをくくっていた部分があったわけですよ。「なんやかや言って番組自体は面白い。だから大丈夫」みたいな安心感ね。
でも現実はラジオファンの想像している以上に深刻だったわけで。
【ケースその1】
けんすうさんのブログ記事「ラジオの聴き方を知っている人は少数?」より
そこで学生さんの発表を聞いてたんですが、結構おもしろかったのですね。
たとえば「パスポートの取り方」「アイロンのかけかた」「洗濯表記の見方」など生活に密着したものでも結構知らないのです。まあ、これはやったことないと知らないかもなので、そうかもなー、と思ってたのですが、とある超有名な広告代理店に内定が決まっている学生さんの一言にびっくりしちゃいました。
「ラジオってどう聴くんですか?」
そこの場にいた20代後半~30代後半の人たちは「いやいや、それはちょっと」と思ったのですが、周りの学生も「知らない」と口々に。
これは衝撃的で。
ジェネレーションギャップなのかなあ、と思って、帰ってからオフィスの同じ歳の28歳女子に「ラジオの聴き方しらない世代が出てきてたよ・・・」と聞いたら、一言。
「ラジオって無料で聴けるの?」
その子も聴き方がわからない、とのことでした。これもびっくり。
(中略)
そしてその話を同じ歳の他の女子に言ったら「私も知らないです・・・」といわれちゃいました。
だいたい30人くらいの学生さんとかに聞いてみたんですが、まあ、「ほとんど知らない」という感触でした。高校生くらいの時の音楽を聴く手段は「パソコン」か「iPod」だった、みたいな感じなので、たしかにラジオついていないですものねえ・・・。
【ケースその2】
こないだ、ニコニコ生放送に大根仁さんが出演して「ラジオは面白い」という話をするというので観てたのだけど、司会の若い女性がもう本当にラジオのことを知らなかった。「ラジオ番組のことを知らない」ではなくて、文字通り「ラジオのことを知らない」。衝撃だったのは司会のこの発言。
「え~と、ラジオって確かAMとFMがあるんでしたっけ?どんな違いがあるか私わからないんです~」
この司会が特別ものを知らない人間だったという見方もあるだろうけど、俺の世代の人間なら、サブカルがどうとか偏差値がどうとか所得階層がどうとかに一切関係なく、「AMはトーク番組中心で、FMは音楽番組中心」程度のことは誰でも言えたはず……。
【ケースその3】
30代くらいのタクシー運転手に「ラジオつけてください。TBSで」というとたいてい「え~っと、どれですかね……」と返される。そもそもラジオのプリセット自体をしてなくて、矢印ボタンで初めてチューニングしはじめる人もいた。
どうですか。
家庭からラジカセが消えてしまったせいなのかどうかわからないが、とにかく若年層にとってラジオは「面白い・面白くない」という判断以前に、そもそもマスメディアとして認知されておらず、視聴の選択肢に最初から入っていない媒体になってしまっていた。それが現実だった。
そこでradikoですよ。
ネットというプラットフォームに乗ることによって格段にアクセスしやすくなったのはもちろんだが、ツイッターで視聴経験を共有する機会も増えた。確かに形式上は他のネットコンテンツと並列な存在になりはしたが、かえってそのことによってラジオの本来持っていた「コンテンツの面白さ」が際だっている部分が大きいのではないか。そもそも「ながらメディア」であるラジオとネットの相性はものすごくいい。radikoの登場によって、ラジオはマスメディアとしての地位を少しずつではあるが取り戻しつつあるんじゃないかと思う。
思うんだけど、ネットをひとくくりにしてテレビ・新聞・雑誌・ラジオの4マスに対峙させる考え方っていまだに根強くあるけど(ある意味堀江さんもそのパラダイムに捕らわれている気が)、それ古いでしょう。ネットってインフラでしょ?「電波」とか「紙」みたいなもんでさ。同じ「電波」でもテレビとラジオがあるように、同じ「ネット」でもツイッターやUSTというメディアがあって、それにradikoが加わった、ということでよいのではないですかね。融合とかしなくていい、ただ視聴できるチャネルが増えさえすればそれでいいんだよ。
「電波かネットか」という旧式のパラダイムから、「電波もネットも」という新しいパラダイムへの転換期の象徴がradikoなのだろうと思う。テレビも広告モデルで成り立っている以上、このパラダイムからは逃れられないと思うのだけど。
まえだ・たかひろ●自分にとって「これぞ土曜日!」って雰囲気の番組というのがあって、歴代「土曜日」を挙げていくと、『ウイークエンダー』『ひょうきん族』『たかじんnoばぁ~』なのですけど、最近それに『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』が加わりました。