ソウルを宿したマーヴェラス・アクト、佐藤聖子

 ガールポップ探求は以前続行中なんですが……戦果はなかなか厳しいものがあります。
 良い曲がまったく発掘できてないわけではありません。が、失望に失望を重ね、死屍累々をかき分け(失礼)、ようやくブライテストな1曲に辿りつくような次第で。当たりを引く確率がかなり低いんすよね。

  別に「ガールポップはたいがいクソだ!」と言いたいわけじゃないんです。自分が求めてるのはつまるところ、ほどよくダンサブル/うっすらグルーヴィーな楽曲で、それはこのジャンルにおいて大勢を占めてるわけではないってだけのハナシなんですよね。むしろ、永井真理子の系譜に連なるような元気ロックの方が強かったりして。

  それでいて、元気ロックなシンガーの作品に軽快なダンス・チューンが1曲だけ潜んでたりするのがJ-POPの恐ろしいところであり、厄介なところであり、楽しいところでもあるんですよねえ。だもんで、永井嬢であれ辛島美登里であれ攻めて行って、己の耳で確認するしかない。孤独な戦いは続きます。

 そんな難儀なジャンルにおいて、珍しく意識的にグルーヴ方面の音を選び取った活動を展開していたのが佐藤聖子さんであります。 筆者が最初に手に取った聖子さんの作品は94年発表の『Marvelous Act』でした。その冒頭を飾る”この恋がすべて”を。

佐藤聖子”この恋がすべて”

 動画部分に掲載されてるジャケットにピンと来たわけです。彼女のスタイリングがあからさまに黒い。こりゃなんかあるだろと購入してみたところ、↑のソウル成分ががっつり溶け込んだナンバーが飛び出して来たので快哉を叫んだのでした。

 彼女のWikipediaには「活動末期にはパトリス・ラッシェンのようなクロスオーバー感覚のジャズおよびソウルに関心を寄せていた」とあります。『Marvelous Act』はキャリアの中期の作品ですが、音から察するに、この頃からソウル志向が芽生えていたんじゃないかな~と。以降のアルバムはみんな俺好みの名盤なんですよ。というわけで、お次は翌95年発表の『SATELLITE☆S』から”Sands, stars & tears”を。

 佐藤聖子”Sands, stars & tears”
 

 この時点でR&Bにアプローチしてるってのは早いんじゃないですかね。シングル曲の”Voice”とかも最高としか言いようがない!

 で、我がファイヴァリット聖子ナンバーが同95年発表の『CRYSTAL』収録曲”地上9cmの宇宙”であります。

佐藤聖子”地上9cmの宇宙”

 星座についての描写があるところ含め、ラー・バンド”Clouds Across The Moon”と同じフォルダに分類したくなる地味名曲。素晴らしい! 『CRYSTAL』は楽曲も粒ぞろいで、一番完成度の高いアルバムかもしれません。

  ……などと言いつつ、実はこの『CRYSTAL』が聖子嬢のラスト・アルバムなのです。以降にもシングルは何枚かリリースしているものの、それらをアルバムとしてまとめることなく、彼女はキャリアに幕を下ろしてしまった模様。そして困ったことに、末期のシングルがまた良いんですよ。97年発表の”愛のメロディー”をどうぞ。

佐藤聖子”愛のメロディー”
 

 プロデュースは朝本浩文。ジャズ・ファンク~クロスオーヴァーをクラブ視点で採り入れ、ポップに昇華した彼らしい逸品で、これは誰が聴いても唸る傑作なんじゃないでしょうか。

  本シングル以降にも彼女は”Windy”と”Our Song”というシングルを発表しているようなのですが……悲しいかなこの2枚はいまだに聴けておりません。短冊CDが中古盤屋からも姿を消しつつあるこのご時世で、いったいいつになったら発掘できるのか……というわけで、末期のシングルも網羅した佐藤聖子コンプリート・ベスト盤のリリースが待たれるところです。切望!