ピンホールカメラを作って撮って現像してみた

 ちょっと事情があって、先日、ピンホールカメラを作って撮影をして、それを暗室で現像/紙焼きするという機会があった。なんかもうモロにお父さんの日曜日的な感じでちょっと恥ずかしいのだけど、けっこう手間のかかる作業だったので、ここに残しておこう。
 これが今回作ったピンホールカメラ。丈夫な紙箱を使った。サイズはキャビネサイズの印画紙が切らずにちょうど入るぐらいのもの。
ピンホールカメラ
 蓋の中央にピンホールがセットされている。ピンホールはビールのアルミ缶を3cm四方くらいに切ったものにマチ針で0.3mmくらいの穴を開け、全体を黒く塗ってある。それを写真用の黒テープで取り付けた。
 箱の内側はつや消しの黒い塗料(今回は黒板を作るためのスプレー塗料)で塗ってある。箱の中にキャビネのモノクロ印画紙を仕込んでおく。
ピンホールカメラ
 シャッターは黒テープ。外すと露光する。
 でテスト撮影してみた。
tenmangu2
 これで10分以上露光している。思いがけずシャープな像で驚いた。
tenmangu
(なにも寺じゃなくてもという気もするが、ピンホールカメラはシャッタースピードが遅いしブツが謎の箱風なので、うちの周囲の住宅地だとそんなもの置いてじっと待ってるだけで怪しい人と思われてしまいそうだったのだ。。このお寺はふだんは人が全然いない)
 別の日にも撮ってみた↓
metro

uku
 この日は雨だったので、やむを得ず室内で、戦前の芸術写真風のものにした。シャッタースピードは1時間を超えてて、それでもアンダーになってしまう。
 撮影した印画紙がネガ(反転した像)になる。それを未使用の印画紙の上に感光面を重ねて置いて上から光を当てるとポジ(ふつうの像)ができる。という作業は暗室でやらないといけないので、レンタル暗室に行った。
 横浜にあるザ・ダークルーム・インターナショナルというNPOが運営しているレンタル暗室を使わせてもらった。想像してたより全然キレイで使いやすく、びっくりした。値段もリーズナブルだと思う。
 僕は高校生の頃にしばらく写真にハマって毎日のように暗室に入り浸っていた時期があるのだけど、酢酸の匂いと、赤く薄暗い安全光に照らされた空間がすごく懐かしかった。現像液に浸した白い印画紙からじんわりと像が現れてくる十数秒ほどの時間は、独特の緊張感があってぞくぞくする。あー思い出した、この感覚だ!
(写真が好きで、でも未体験なら、暗室作業はぜひ一回体験してみるといいと思います。ほんとうにおすすめです)。
 ピンホールカメラのような原始的な構造のカメラとデジタルカメラは同じ進化の線上にあると僕は思ってたし、きっとそう思ってる人が多いと思うのだけど、作って撮影してみて感じたのは、なんかもうこれは全然別の体験だなということだ。
 デジカメでの撮影はわれわれの自然な日常感覚の上にあって、撮ると見たままのものが切り取られる感覚なのだけど、ピンホールカメラで写真を撮る→現像するという体験は、光や自分の目に映る像というものを、なんかものすごく異化して意識させる作用がある。
 シャッタースピードを計算してはじき出さないといけないことで光というものの存在を強く意識するし、露光中は印画紙の上で化学反応がじわじわ進んでいるイメージが頭に浮かぶ。ファインダーがないので光=像がどんな角度でピンホールカメラの露光面に入り込んでくるのかを目と想像でイメージしないといけない。(その他にも色々と光に気を配ることがたくさんある)。
 楽器で音楽を演奏するときの感じにちょっと似てるかもしれない。初めての曲を譜面と顔を突き合わせながら楽器で弾こうとしているときの感じ。CDのプレイボタンを押せばすぐにその曲をかたちにして手に入れることができるのだけど、曲の構造の内側に入り込んでその曲をものにしていく過程というのは、ちょっとまた別種の楽しさ(と辛さ)がある。