さよなら、Napster(そしてこの機会に思ったこと)

 日本のNapsterが5月いっぱいでサービス終了ということになってしまった。とても残念だ。というか、なくなると困るんだよなー。
 なにしろこの数年来Napsterがメインの音楽ソースだったので、Napsterが終わったとたんに、過去3年分ほどの僕の音楽コレクション(という言い方も適切ではないが)がすっぽりゼロになってしまうのだ。
コレやコレやコレを聴いていたという履歴だけでも手元に残しておかないと、記憶はどんどん薄れて行くだろうし。。
 サブスクリプション型の音楽配信サービスがなくなるというのは、つまりはこういうことなんだなー。乗り換えられるサービスがあればいいのだけど、目下のところ、そういうサービスは日本にはない。
 Napsterはへヴィな音楽ユーザには便利なサービスだった。結局最後まで邦楽はプア過ぎなままだったけど、洋楽はかなりのカタログが揃っていた(たまにないものもあってそれだけはCDで買っていたけど、せいぜい月に数枚だった)。気が向くままに新譜を聴きまくれる。急に思い出して聴きたくなったアルバムもすぐに検索して聴ける。個人的にはそれは90年代末に夢見たような環境の実現と言えた。
 でも、Napsterはけっきょくメジャーなサービスにはなれなかった。インターフェイスの使い勝手の問題や、対応音楽プレイヤーの問題(みんなiPodだから)、邦楽がプア過ぎる問題など、いろいろ理由はあるだろう。
 僕はそこらへんは割り切って使っていたが、音楽作品という価値物の「ありがたみ」の問題は、もうすこし普遍的な問題かもしれない(Napsterだけじゃなくて、他の音楽配信サービスにも共通することだと思うが)。
 (語弊があるかも知れないけど)Napsterの音楽は、やっぱりなんとなくありがたみが薄いのだ。
 音楽配信が音楽をコモディティ化するんじゃないかということは過去よく語られてきたことだけども、必ずしもデータで買うからCDよりありがたみが感じられなくなる、とは限らない。サービスをどう設計するかということも、きっと大きくかかわっている。
 僕が音楽配信サービス(僕の場合はそれはほとんどNapsterとイコールいうことだったのだが)に感じる物足りなさはなんといっても、「ジャケット」がちゃんと整備されていないことだ。いや単にジャケ写データのあるなしの話ではなくて、楽曲リストや作詞作曲者、プレイヤーのクレジット、歌詞、そしてもちろんアートワークも含めた音楽に付随する情報がすごくプアであることが不満なのだ。
 なんというか、OKストアで買った業務用のお茶漬け海苔みたいな感じ。透明なでかいふくろにガーッといっぱい入ってて、味は確かにいっしょなんだけど、なんかこう。。という感じが、iTunes Storeでさえあると僕は思う。
 単にパッケージへのノスタルジーでは?と思われるかも知れず、実際そういうところもあるような気もするのだが、でも別に、あの正方形のCDジャケットをデジタルで再現したものが見たいということじゃない。その作品のプロフィールがしっかりわかるデータと、作者が望むならその作品の世界を視覚化したデジタルのアートワーク、そんな音楽配信に適したデジタルスリーブとでも言うようなフォーマットが一般化すれば、サブスクリプションであっても、1曲づつ買うのであっても、リスナーはもっと作品との間に親密な関係を結びやすいはずだ。
 もっとも、サブスクリプション型サービスに固有の問題として、「それを買う」という選択をしたことの責任というか重みみたいなものがユーザに希薄ということも、音楽の「ありがたみ」と関係しているような気もする。
 この感覚はもしかするとある年齢以上の人にしかもはや共有されないかも知れないのだが、音楽にしても、たとえば雑誌にしても、そいつが何を選んで金を出したのか?ということが、すなわちそいつの価値観の表明になる、という関係性が10年ぐらい前まではまだ成立していたと思う。音楽を買う、雑誌を買うという行為には、ある価値観(やそれを体現するコミュニティ)にコミットするための会費を払っているような感覚があった。
 サブスクリプション型の音楽配信はホント便利だといまも思っているが、この選択したことの「責任」みたいなものはどうしても希薄になってしまう気がする。
(絶対いいだろうと思って買って聴いてみたら、正直どこがいいのかよくわからなかったけど、良さがわかるまで我慢してでも聴く、みたいな行為はこういう↑関係性がないと生じないだろうなとも思う。サブスクリプション・サービスで発表されていたら、果たして『ペットサウンズ』は評価されたか?みたいなこと)
 えーと、まあとにかく。
 Napsterがなくなったことで、僕は音楽ソースのボートピープルになることが確定してしまった。なにに乗り換えようかなー。