タナナカツキの語る、一人しゃべりのすすめ。 / タナカカツキのデジオナイト

2004年の開局以来、「おしゃべりを録音してアップするだけでラジオDJ気取りになれる」という目から鱗の方法論で数々のフォロワーを生んできた「タナカカツキのデジオナイト」。この秋、放送1000回を迎えるパーソナリティのタナカカツキ氏にデジオの魅力を聞いた。

テキスト:前田隆弘(Spoo! inc.

――デジオならではの良さって何だと思いますか。

「例えば、クラスで同じ音楽を聴いてる人って少ないですよね。聴いてるものが分かっても、本人がどんな人間か分かるまで時間かかるし。でも、最初にそいつが普段考えていることや好きなことを語ってるのを聞けば、もう目に見える第一印象はどうでも良くなりますよね。安心できるっていうか。やっぱり人付き合いって怖いですからね」

――音声を通して知らない相手と触れあえる、と。

「僕、美大で就職の講演をすることもあるんですけど、本音は『デジオをやれ!』って言いたいんですよ」

――え、仕事とデジオに何か関係が……。

「部屋でイラスト描くのは一人で勝手にやることじゃないですか。でも就職っていうのは『世の中とつながる』ってことですよね。やっぱり仕事やと言うても、基本は人付き合い。『この人いいな』ってのがまず来て、次に『いいイラスト描くね』が来ると思うんですよ。で、自分の人となりを表現するためにうってつけなのがデジオ。だからデジオをやれ!と」

――でも、しゃべりが得意でない人は抵抗があるのでは?

「むしろ人付き合いがあまり好きじゃない、でも頭の中では自問自答をずっと繰り返してるという人がデジオに向いてると思うんですよね。社交的な人って、かえって難しいと思いますよ。自問自答でしゃべることがないからね。頭の中で常に会議してる人は、それを大量に流してたらええだけやから(笑)。あと、それにプラスして表現欲が要ると思いますけどね」

――デジオナイトで夜のしゃべりを推奨しているのは?

「夜はやっぱり一番寂しい時やから。既存の放送の何が嫌かって、無理矢理なパワーがあるところなんですよね。エネルギーの押し売りみたいなのはもうええやん、と思うんですよ。特に今って、ちょっと病に冒されてる時代じゃないですか。なら、ちゃんと病人っぽくせえよ!と(笑)」

――ところで1000回もやってると、完全に新しい話ってそうそう出てこないと思いますが、実際どうですか。

「僕の一人しゃべりのお手本って、鶴瓶さんなんですよ。淡々と一人で日常あったことをしゃべる、っていうのが、ほんまええなあと思ってね。ずっと聞いてると、『きらきらアフロで聞いたな』『ヤングタウンで聞いたな』って、もう4回ぐらい同じ話が出てきてね。何でこんなに同じ話をするのかと思ったんですけど、自分でやってみて納得しましたね。『ああ、そうなるわ』と。まあ気にせんことやなと思って。無理に新しいところを探しても、不自然になるだけやしね。『同じ話になったなあ』って思っても、これから聴いてる人もおるし、またちょっと話のニュアンスも違うやろうしね。でもそれ、400回目くらいで気づいたんですよ。『かぶってきたなあ』って。一人の人間の考えてることのバリエーションって、実は400個くらいなのかもしれないですね」

タナカカツキのデジオナイト まるで昭和の深夜ラジオのような、タナカカツキの一人しゃべり。キャッチコピーは「夜に書く手紙のような」。

◆プロフィール:タナカカツキ

1966年大阪生まれ。1985年マンガ家としてデビュー。著書には『バカドリル』『オッス!トン子ちゃん』(扶桑社)など。2004年4月、『タナカカツキのデジオナイト』を開局。