早過ぎた? 角松敏生による90年代ブラコン歌謡

歩くアーバン・シティー、生けるリゾート・アイランド、角松敏生。山下達郎の系譜に連なるシティポップ・メイカーにして、ジャパニーズ・フュージョン~クロス・オーヴァーの旗手であり、勃興期のヒップホップ~エレクトロに国内でいち早くアプローチした鋭敏なグルーヴ嗅覚の持ち主としても知られる鬼才。杏里らを手掛け、ヒット曲もガンガン輩出しておりますな。しかもハンサムときた。いやあ、こんな男に生まれたかったもんです。

そんな角松さんは、1993年から1998年にかけてソロでの活動を休止しており、この間はもっぱらプロデュース業に勤しんでおりました。この時期にエイベックスとがっぷり四つに組んで立ち上げたプロジェクトが、今回取り上げる〈VOCALAND〉であります。

 〈VOCALAND〉は、氏が全面プロデュースを務めた女性ヴォーカルのコンピ・シリーズ。新人の発掘を重視していたようで、無名のシンガーを積極的にフィーチャーしておりました。一方で、海外のヴェテラン・シンガーも起用して、並列に混在させており、その辺もいかにも角松さんっぽいな~と思うんですが、まあ今回は国内勢に絞って紹介します。

  96年にリリースされた第1弾『VOCALAND』の1曲目を飾ったのが、こちらのナンバー。

Sala from VOCALAND “SPLENDID LOVE”

 当時はUAの”情熱”や”リズム”がヒットしており、その後の邦R&Bブームの下地が作られつつある時期だと思うんですが、”SPLENDID LOVE”は思いっきり80年代のブラコン・スタイル。そこが素晴らしいじゃないですか。これは遅れてるのではなく、むしろ早過ぎたと解釈するべきでしょう!

  『VOCALAND』にはこんな歌謡ハウスの名曲も。

Aki from VOCA LAND ”ふりむかないで~Don’t Look Back~

 そして翌97年には第2弾『VOCALAND 2』が登場。こちらはミディアム・スロウ中心のラインナップとなっております。同作より吉沢梨絵のアーバン・チューンを。

吉沢梨絵”Give it up”

 余談ですが、アップロードしてくださった方の手作りと思われる画像のスライドがいい味出してますよね。貸しポジっぽいというか、カラオケとかパチンコ店の壁にプリントしてありそうというか……。都会の夜のロンリネスを見事に演出。むろん楽曲込みで! 

  この吉沢梨絵さんは99年にソロ・アルバム『SWEET REVENGE』をリリース。もちろん角松全面プロデュース。これがまた素晴らしい作品で、特に”サヨナラはくちぐせ”は、この時期の角松ワークスを代表する名曲と思ってます。

吉沢梨絵 “サヨナラはくちぐせ”

 角松さんは2000年代以降、民族音楽に接近しており、〈VOCALAND〉シリーズのようなグルーヴ重視のポップス作品からは距離を置いているようです。が、またこういう楽曲もやぜひ作って欲しいところ。2010年に『VOCALAND 3』が登場するとしたら、いったいどんなサウンドになるのか……そんな妄想にふけるだけで、ワクワクしてくるじゃありませんか。