今年は本の電子配信が普通の現実になる!? / マガジン航

 今まで遠い存在だった電子出版が、このところ現実味を帯びて聞こえ始めてきた。果たして日本の電子出版は今年どう動いていくのか。「本と出版の未来」を考えるメディア『マガジン航』の編集人・仲俣暁生さんに話を聞いた

テキスト:前田隆弘(Spoo! inc.
――電子出版がリアリティを持ってきたのは、iPhoneとKindleの登場が大きいと思うのですが。
「今ちょうどiPhoneとKindleと2個あるのがいいと思うんですよ。1個だけだと、いろんな不満が出てくるんだけど、用途に応じて『Kindle使えばいいじゃん』『iPhoneでいいじゃん』とか選べるし、『両方のいいとこ取りをしたら』という発想も出てくる。iPhoneとKindleが出てきたことで、今は人々の活字メディアに対する想像力が活性化されていると思う。今までの電子出版は、技術先行だったり、ハードメーカーの思惑が絡んでたりしてたけど、今はそういうものとは違って、人々の思いやアイデア先行で動き始めたな、っていう気がしていますね」

――2009年って出版界のターニングポイントじゃないかと思うんです。偶然でしょうけど、雑誌の休刊が加速化したと同時に、この1、2ヶ月くらいは「電子出版、本当に来るんじゃないか!?」と肌で感じてるところがあります。

「今まで絶対来ないと思ってたもんね。少し前まで『ちょっとダサイよね』『正直リアリティないよね』って感じだったのが、本当にこの1年、短く取るとこの2ヶ月くらい、期待値がすごい高まってますよね」 
――ブレイクするには早いでしょうが、アーリーアダプターの人が受け入れるマインドは出来てると思うんです。
「ネット上ではKindle買った人はたくさんいて、自分たちで勝手に(書籍のDL以外に)いろんな可能性を試している。それを見てまた『俺も欲しい!』と言い出す人が出てきて。日本語対応版が出たらかなり売れると思いますよ。で、iPhoneはもうほっといても売れてる。やっぱりハードメーカーや出版社の「供給側の論理」じゃないところが出てきたからだと思いますね。Kindle自体は、2005年に製造を中止したソニーの電子書籍端末と仕組みも大きさもほとんど一緒なんですよ。でも今こういう状況になっているということは、受け手側のリテラシーや欲望はかなり高まっているという気がするんですよね」 
――ただ、本格的に普及するためには「電子出版」というダサい名前を何とかしないといけないですよね。
「本当にそう。『電子出版』って概念なんですよ。概念は商売にならない。やっぱり商品名がないと。バンドエイドじゃなくてもバンドエイドと呼ぶとか(笑)、やっぱり生活に密着するものはしっかりした商品名があるんだよね。でも、僕はもういっそ電子出版についても、変に区別せずに『本』とか『雑誌』って言っちゃっていいんじゃないかと思う。だって、今『電子メール』とは言わない。『メール』でしょう? 『TVゲーム』『ビデオゲーム』だって気がつけば『ゲーム』でしょう。固有の商品名が定着しないなら、そういう形になっていくんじゃないかな。『ブック』とかね(笑)」
*このインタビューの後半部分をコチラでご紹介しております。 

マガジン航 「本と出版の未来」を考えるためのマガジン。電子出版に関する記事が充実している。

◆プロフィール:仲俣暁生
『ワイアード日本語版』などの編集に関わった後、フリーランスの編集者に。『マガジン航』のほか、下北沢発のペーパーメディア「路字」の編集人、TBSラジオ「LIFE」のサブパーソナリティもつとめる。