今の音楽業界はまるで、 焼畑農業のようだ / ototoy

 ototoyの竹中さんは音楽が置かれている状況を常に憂いていて、それを変えるために行動を起こす人。彼をモチベートしている問題意識とは。

テキスト:川崎和哉(Spoo! inc.
「やっぱり若者の音楽離れが激しすぎますよ。日本だと、マドンナとかU2とかグローバルでめちゃくちゃ売れるような人たちが売れない。オアシス?何それ知らない、みたいな。この洋楽の知られなさ具合っていうのは、本当に危機的だと思います」
――なぜそうなったんだと思います?
 「テレビの影響が大きい。ゴールデンタイムをバラエティ番組が埋め尽くしている。子どもたちは自然にEXILEとかジャニーズとか吉本とかがいいんだっていう風に刷り込まれて、結局オアシスとかに触れる機会はどこにもない。昔はゴールデンタイムの大部分が歌謡曲で埋められていても『ベストヒットUSA』とかが隙間隙間にあった。今はまったくない。全放映時間の5%とかでいいんです。そういうチャンスがあれば、好奇心旺盛な子どもならひゅーってそっちに行くと思うんですけど。
  インターネットだと情報はあっても分散しているので、自分が好きなこのアーティストは世の中の趨勢から見て、本当にいいんだろうか悪いんだろうかっていうことが判断できなくて不安になる。テレビでやってれば共通の話題として大丈夫だと思えるんだけど。マスとしてのテレビの役割というのはそういうところにあったと思うんだけど、全然その役割を果たさなくなった」 
――音楽の相対的な価値が低下しているということはないですか。 
「昔はごはんを30分かけて食べていたところ今は5秒で済む、みたいなことはないですよね。音楽を聴く時間も同じです。僕らの1日の1/24ぐらいを占めるものという部分は、LPの時代から全然変わってない。自分の生活において、ある時間を好きなもので埋めてくれるもの、という意味では、アルバムの価値ってまったく下がっていないと思うんです。ただ、30年前はそこに3千円の価値があったのに、いまその1時間に対して仮に3百円しか払えないとすると、時間あたりの金銭的価値がものすごくデフレしてる。それでいいのかっていうことですよ」
 ――その傾向は確かにあると思います。
 「農家の人たちも音楽を作っている人たちも同じことで、生み出されたものの価値をきちんとわかって、それに対価を払う仕組みがちゃんとできていないと、干上がってしまいます。そして、優れた音楽を作る人、新しい音楽に挑戦する人がどんどんいなくなってしまう。いま、僕らは焼畑農業に近いようなことをしていると思います。少なくとも、ミュージシャンが誇りをもって創作活動を続けられるような社会的基盤が必要なんです。それを分かっていない音楽配信サービスの経営者は、儲かんないからやめようとか思うんですよ。社会のエコシステムから見ると、僕らは畑から仕入れさせてもらって、それを消費者へ流通させる、すごい重要な役目を担っている。ここは死んじゃいけないし、僕らが死ぬと畑がおかしくなる。そのことを意識すべきだと思いますね」
ototoy recommuniから改名&リニューアルした完全DRMフリーの音楽配信サービス。 
 ◆プロフィール:「技術家」として数多くのサービスに関わるネット界の知る人ぞ知る重要人物。モリタポBCCKSも彼の仕事。株式会社レコミュニ代表取締役。ototoyではカーネーションの新作『さみだれ』をMP3&HQDで配信中。