「タダ」をどうとらえるか? / 仲俣暁生(マガジン航)

<p><b>*テレビブロス1月9日号「ネット探偵団」に掲載したインタビューの続きです。</b></p><p style=”text-align: right;”>テキスト/前田隆弘(Spoo! inc.)</p><p style=”text-align: right;”><br /></p><p>──キンドルで書籍を配信すると、紙の流通よりも圧倒的に安く出せるはずですよね。ただ、その一方で、今の10代や20代の人間は、テキストデータにお金を払うという感覚そのものがないのでは?とも思うんです。「高いか安いか」ではなく、「有料か無料か」という価値判断になっているというか。</p><p>「確かによくそういう風に言われるんだけど、それは単に消費者教育がなっていないせいなんですよ」</p><p>──消費者教育というのは?</p><p>

<div>「つまり、日本の業界が、ずーっと消費者に対してタダだと思わせてきた面があるわけ。タダのものには、それこそ『<a href=”http://www.freemium.jp/about”>フリーミアム</a>』じゃないけれども、必ず理由がある。ネットだけじゃなく、フリーペーパーっていうのは、タダだけど裏ではちゃんとビジネスが回ってたわけじゃないですか。あと携帯(のコンテンツ)なんかは、タダに思えてるけど実はちゃんとキャリアに払っている。そうやって、お金を払っていることを意識させないでここまでやってきた。</div><div><br /></div><div> で、『実は払ってるんだ』ってことに気付いてお金を払わなくなるのは、やっぱり巧妙にタダだと思わせてきたのが、一個あるんじゃないかと思うわけ。その方法が失敗だったのかどうかは分からない。でも今は景気が悪くなって、本当にお金を使わなくなってきちゃったから、(その悪い面が出て)やばくなってきている、っていう状況ですよね。</div><div><br /></div><div> あともう一つ心配なのは、本当にものを考えたり、ものを作ってる人って、お金をかけてるでしょう? タダのものばかり享受する人間と、お金をかける人間とのギャップが広がっていってしまうんですよ。「情報なんてタダだ」と思ってる奴はそれで喜んでるうちにどんどん弱者になっていって、社会的な地位が向上しなくなる。中高年とか専門家とか、あとメディアの側にいる人は、お金はないとは言っても、最低限のことにはお金をかけるから、そうするとどんどん持てる者と持たざる者とのギャップが広がっていく。それが一番恐れていることなんですよ。</div><div><br /></div><div> だから、消費者教育の面と、メディア・リテラシーみたいなものも含めて、『本当の意味ではタダじゃないんだ』っていうことを言わないといけない」</div><div><br /></div><div>──でも割とみんな……若い人は特に「インターネットで何でもタダで手に入る」みたいな考えを根強く持ってますよね。もちろんそれは幻想だと思いますけど。</div><div><br /></div><div>「僕がインターネットをもっとみんな本気で使った方がいいと思うのは、あそこで蓄積されてるのって、コンテンツじゃなくて、ある種の社会資本なんじゃないかと思ってるところがあるからなんですよ。コミュニケーション能力とか、ある種の情報を教えてくれるツテとかね。</div><div><br /></div><div>今、社会資本って現実社会では得られないじゃない?会社や企業や、学校だってどんどん狭くなっちゃってて。だから、まあ友達って言っちゃっても別にいいんだけど、でも友達とはちょっと違う、社会資本の蓄積を誰でもネットでできるようになってきた。多分、雑誌もある意味では社会資本が可視化されたものだと思うんだよね。</div><div><br /></div><div> タダっていうことの感覚が、コンテンツにだけ着目していくと、すごく議論が狭くなっちゃう。コンテンツはタダでもいいけど、それ以外のところでお金を取るモデルは、やっぱりクリス・アンダーソンが言う通り、あるわけでしょう? だから、タダであることについての話はもうちょっと厳密に考えていくべきだと思う。いろいろな人がね」</div><div><br /></div><div>&nbsp;</div><div><br /></div><div>◆プロフィール:仲俣暁生</div><div><br /></div><div>『ワイアード日本語版』などの編集に関わった後、フリーランスの編集者に。『<a href=”http://www.dotbook.jp/magazine-k/”>マガジン航</a>』のほか、下北沢発のペーパーメディア「<a href=”http://www.big.or.jp/~solar/rojipost.html”>路字</a>」の編集人、TBSラジオ「<a href=”http://www.tbsradio.jp/life/index.html”>LIFE</a>」のサブパーソナリティもつとめる。</div>