中年だって「欲しがらない」?

書店の平台で書名を見てすぐに、自分の中でピンと来るものがあったので買って読んでみた。
「嫌消費」世代の研究――経済を揺るがす「欲しがらない」若者たち、というタイトルだ。
消費したがらない「世代」というのが存在するとは思ってなかったのだけど、とくに欲しいものなんてないという感覚が、低所得だからとか、世間的に経済が冷え込んでいるからといったこととはまた別の次元であるような気がしていた。しかもその感覚は他でもない自分の中にもあるように思っていた。
「嫌消費」世代の研究――経済を揺るがす「欲しがらない」若者たち
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「クルマ買うなんてバカじゃないの?」

若者の消費が変化している。若者はなぜ、物を買わなくなっているのか。
そこには巷間ささやかれている「低収入」「格差」「非正規雇用の増加」以上に深刻な、
彼ら独特の心理=「劣等感」が強く影響している。

本書では「収入が十分あっても消費しない」傾向を「嫌消費」と名付け、
大規模な統計調査と聞き取り調査をもとに、「嫌消費」を担う世代=20代後半の
「買わない心理」の原因と深層に鋭く迫る。ビジネスパーソン必読の一冊。

「嫌消費」世代とは著者の言う「バブル後世代」のことを差している。1979年〜83年までに生まれた人たちで、団塊ジュニアの次の世代であり、中学入学前後にバブル崩壊を間接的に体験した世代と定義されている。
この世代の人たち(つまり現在の20代後半)が、欲しがらない若者なのだと著者は言う。消費したがらない世代特性があるのだと。象徴的なのが、クルマとAV機器と海外旅行で、バブル後世代はそんなものはあまり欲しがらないんだそうだ。著者は1951〜60年生まれの「断層世代」に属していて、その世代にとってはそれは衝撃的な事実なんだという。彼ら断層世代にとっては、それらは憧れであり夢であったからだ。

僕は著者の分類によると断層世代の次の「新人類」(1961年〜70年生まれ)に該当する。その僕から見ると、薄型大画面テレビとか別に欲しくない、都会でクルマを所有するなんてバカバカしい、という感覚はそれなりに共有できるものなのだが、海外旅行に憧れないという感覚は僕もずっと違和感を感じていたものだ。(そしてそれについてエントリを書いたこともある)

ただ、著者がこの本で言おうとしているのは、そんな風に、若者から中年、壮年、熟年と離れるにつれて消費に対する意識のグラデーションがあるということではなくて、バブル後世代というのが際立って(それより若い少子化世代よりも)嫌消費傾向があるということで、それをイメージではなくて統計的に、かつ世代論というツールを用いて明らかにしようと試みている。

とはいえ個人的でウェットな実感レベルでは、この嫌消費傾向というのはバブル後世代にとどまらず、世代を超えて伝播していくものなんじゃないかという「イメージ」が僕にはある。消費が幸福のビジョンを与えることは、どんどん難しくなっている気がする(僕が個人的に絶望しているだけなのかもしれないが、いったいなにを買えたら自分が幸せだと思うのか、正直なところよくわからない)。
だからどちらかというと、消費がもたらす悪い側面に対する罪悪感を、いかにして見せないようにするか、あるいは罪悪に釣り合うだけのメリットをいかに演出するかといった方向で一生懸命工夫しないと物が売れなくなっているんじゃないのか。エコロジーとかフェアトレードとかギルティフリーみたいな消費トレンドは、いずれもそういう罪悪感が背景にあるんだろう。

あれ? なんか暗い話になってしまった。そんなつもりじゃなかったのだが。。

著者も「バブル後世代の嫌消費は、グローバルな消費の歴史的変化、ある意味でポストモダン消費をリードしているのかもしれない」と結論づけている。だからこの世代の消費を研究することで、これからの消費のかたちが見えてくるのだし、どんなマーケティングが有効なのかも見えてくるんだと言ってるんだと思う。

冒頭の写真は(CC) topdeluxe