思いついたらとにかく形にして世に出す! / ePiano

矢野さとるという名前を知らなくても「字幕.in」、「予告.in」の名前は知ってるだろう。ハイペースでユニークなサービスを連発する彼に、最新作「ePiano」を中心に聞く。

テキスト:川崎和哉(Spoo! inc.

 「いつも遊びの中からサービスが生まれてくるんです」と矢野さん。ePianoもそうだ。

ePiano.jpg
ePiano – オンラインでピアノが弾けるサービス
ネットの上で不特定多数の人と一緒にピアノを弾いて楽しめるサービス。

 「笛を吹く”ピッピッピー!”って音をリアルタイムに共有できる実験サービスを作って、友達に見せびらかしてたんですが、三三七拍子みたいなメロディが再現できたので『これドレミにしたらカエルの歌とかもみんなで弾けるんじゃね』みたいな話になって」

 ePiano自体はとてもシンプルなツールなのだけど、そこにいろんな人がやってきて、みんながいろんな使い方をし始めると、とたんに魅力的なサービスへと孵化する。

 「僕自身も想像もしていなかったような、壮絶な使い方をする職人が現れていつも驚かされます(笑)」

  それは矢野さんの代表作、字幕.inなんかでも同様で、それこそがCGMの醍醐味なんだろう。

 「CGM大好きですね。というか、個人にとってはいかにお金をかけずサービスを実現するか!というのは死活問題なので、CGMに頼らざるを得ない状況もあります。だから企業より個人の方がはるかにCGMをよく理解して活用してる気がします」

 ePianoにはひとつ課題があって、それは著作権の問題をいかにクリアするかということ。

 「実は著作権の問題はJASRAC側のご厚意もあって解決しました。『事例のない新しいサービスで現状の規約では対応できない』ということだったんですが、ePianoの今後の可能性や、取り組みを評価・ご理解して頂いて、著作権の利用承諾を頂けることになりました。既に諸手続きは完了していて、確認待ちの状態です。

 個人でももっと音楽著作権が利用しやすい環境が整えば、おもしろい音系サービスが生まれるのになあと僕は常々思っていました。今後は音楽著作の敷居がもっと低くなって、五感をガンガン使うようなおもしろいサービスがたくさん生まれたら素敵だなと思います」

 予告.inも矢野さんの代表作だ。ネットから犯行予告を自動収集して、内容によっては通報もする。総務相が「数億円」かけて作りたいと言っていたのと同様のサービスを2時間で作ってしまったというものだ。

 「思いついたら、とにかく形にして、世に出す。ユーザのいろんな反応をみて、臨機応変に開発していく、というのが基本姿勢です」

 ところで、2008年のネットはこれはスゴいと思える新サービスが少なかったかなーと個人的には思い込んでいたのだが、矢野さんは前向きに新しい動向を捉えていた。

 「pixiv、はてなハイク、黒板in、手書きブログ、flipbook.inなどのお絵かき系サービス。ePiano、ニコ百のピコカキコのような音楽サービス――。文字以外の手段でアプローチするサービスが多く生まれた1年だったと思います。僕も負けずに、いろんな新しい要素を取り込んで、楽しくて斬新なサービスを提供していきたいと思っています」

◆Profile:矢野さとる
ヤフー、ライブドア等、大手Web系企業をへて独立。現在は字幕in株式会社を経営。個人でのWebサービス公開にも精力的で、100以上のサービスを個人で運営。予告inの管理人にして三度の飯よりWebを愛する27歳。

(2008/10/06 執筆)