街角にあるデザインを再発見する「視線」 / PingMag

ただのデザイン専門誌じゃない楽しくて刺激的なメディアPingMag。プロデューサー トム・ヴィンセントさんにユニークな編集姿勢について聞く。

テキスト:川崎和哉(Spoo! inc.

 PingMagは面白い。僕はデザイン雑誌はほとんど読まないけど、PingMagは読む。PingMagはデザインという視点から、世の中のいろんなものごとを切り取って見せてくれるメディアだからだ。

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PingMag
デザインという切り口で、日本を中心に文化やモノ、ヒトを紹介。
日英バイリンガル。

 「大物デザイナーや有名人の話題だけじゃなくて、本当に小さな、ふだん気づかないような街角にあるものとかスーパーの中にあるもの――”デザイン”というような立派な名前では呼ばれていないものにもう一回目を向けてみようという姿勢でやってるんです。それで、気づいてなかった面白い面が見えてきて刺激になったり、ちょっとした”種まき”になったらいいかなと。だから人と、人が作ってるモノ、というのが大まかなテーマですね」

 そんな姿勢を象徴するエントリが、ガムテープ文字を作る警備員のおじさん(佐藤修悦さん)の記事だろう。

 「あれはすごいね。ぜひ取り上げたいと思った。あれはまさしくPingMagのミッションにぴったりの話題だったね」

 PingMagのもうひとつの特徴は、日英バイリンガルだということ。

 「ほとんどの記事は日本の話題を取り上げてます。PingMagの重要な役割として、日本の文化を海外に紹介する、というのがあるんです」

 かなり驚いたのだが、PingMagのページビューの65%は海外からのもの。国内からは35%。僕はまったく逆だろうと思い込んでいた。

 「ものすごい注目されてるんですよ、外から。来てない国がほとんどない。カザフスタンとかウズベキスタンとかガーナとかナイジェリアとか、ほんとに全世界から見に来てる。ログ見てるとニコニコしちゃいます」

 しかしなんでそんなに海外にウケるんだろう。

 「日本の東京に、ものすごくかっこいいイメージがあるんですよ。英語ページで圧倒的に人気なのは、”Fashion””Japan””Graphics”のカテゴリ。中でも”Fashion”がトップです。やっぱり日本はすごい注目されてるんですよ」

 ところでヴィンセントさんはインターネットの商用利用が始まった当初からウェブに関わってきたキーパーソンだ。いまの日本のネット事情はどう見てるんだろう。

 「ウェブ上のサービス――Googleはもちろん、Flickr、YouTubeなど、日本のものはほとんどない。未だになんで日本人のための日本のサービスがないのか不思議。みんな大きく考え過ぎてるんじゃないかな。僕にはYouTubeは作れない。でも、屋台だったら作れる。ならそれからスタートすればいいと思うんだよね」

 最後に彼が最近注目しているサービスをひとつ教えてもらった。

 「Lulu.comがすごく気になります。例えば小説を書いたらそのワードファイルと表紙デザインをアップロードして値段を決めれば無料で本が作れる。それを6万店舗の流通ネットワークを通じて売ることが出来るんです。これはすごいですよ」

◆Profile:トム・ヴィンセント
1967年ロンドン生まれ。Webデザイン会社イメージソースの取締役/ディレクターとして国内外企業のWebサイトを担当。2005年からPingMagプロデューサー。2007年、株式会社イェス・コミュニケーション代表取締役に就任。

(2007/10/3 執筆)