ネットがすべてじゃない。紙媒体にこだわる理由。 / 萌えるヘッドホン読本

2007年11月18日、東京ビッグサイトで行われた自主制作出版物の展示販売会コミティア82に、会場の外まで続く異例の行列ができた。

テキスト:川崎和哉(Spoo! inc.

 並んでいる人たちの目当ては『萌えるヘッドホン読本』。イラストレーターたちによる”ヘッドホン娘”イラストと、本格的な実機レビューを融合させた豪華なムックだ。企画・執筆したのは岩井 喬さん。

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萌えるヘッドホン読本
B5版・68Pオールカラーの豪華本。同人誌書店や
一部オーディオショップで販売中

 「僕はオーディオライターとして雑誌で原稿を書いてるんですが、iPodなどの影響もあって、今年はヘッドフォンレビューの仕事がすごく多かった。3、40機種ぐらいは聞いています。その一方で、”ヘッドホン娘”というジャンルが確立されてきて、秋にイベントも開催されることになった。僕はライターの傍ら、同人誌活動もやっていて、その両方を融合したものをいつかやりたいと思っていたので、これは面白いタイミングじゃないかと思ったんです」

 デザインを担当した月神るなさんによると、”ヘッドホン娘”というジャンルが知られるようになったのは数年前から。『萌えるヘッドホン読本』のカバーイラストも描いているオオツカマヒロさんがパイオニア的な存在だ。

 「以前も小道具的にヘッドフォンを描く人はいましたが、”ヘッドホン娘”を描くということに意識的だったのはオオツカさんが最初だと思います。オオツカさんはすべて実機で描いていて、しかも知る人ぞ知る機種が多くて、それも人気の理由だったんじゃないでしょうか」

 企画の最初にやったのはヘッドフォンの選定。企画書を作り、各メーカーから許諾をもらい、実機も借り、本当におすすめできる26機種だけを厳選した。同人誌「だからこそ」徹底的にこだわって作った。

 「オーディオ専門誌と比べても遜色のないしっかりしたレビューにしました。専門誌でも500字が限度ですが、今回は1機種ごとに1Pを割いてレビューしています」

 月神さんによるデザインも、いわゆる萌え的なものから距離を置き、「ピシッとした重みがあるもの」にした。しっかりとした制作体制で高品質なものを出すことで、”萌え”的なカルチャーへの偏見を打ち消したいという想いもあったという。ただ、ネットで大きな話題になったのはまったくの予想外だったそうだ。ネットのメリットは認めながらも、彼らはむしろ、ネットにはないリアリティやコミュニケーションに価値を置いている。月神さんは言う。

 「僕らがコミティアに出ているのは、人と会って手渡しして実際の声が聞けるから。あえて生のイベントを選んでいるんです。」

 「それに、ネットで誰でも情報発信ができるという中でも、僕らはモノとして出すということにこだわっていきたい。ネットでたくさんの人に知っていただけるのはすごくうれしいですけど、それだけがすべてじゃないというのは同人誌に関わってる皆さん同じ気持ちだと思います」

(2007/11/22 執筆)