カタログのように団地写真を撮影収集している人気サイト『住宅都市整理公団』の大山総裁。なんで今度は「ジャンクション」なんでしょうか?
テキスト:川崎和哉(Spoo! inc.)
まず、総裁がジャンクションのどういうところに面白さを感じているのかを聞いてみた。
日本ジャンクション公団
セクシーなジャンクション写真を満載。
総裁のベストは大黒ジャンクションとか。
「2つの側面があって、1つは形とか大きさとか見た目そのもの。ああいうグニャグニャしたでっかいものが高架で持ち上げられて空を覆っているのは形的にすごくダイナミックだし、そんなものが街中にあるのはそれだけでスペクタクルです。」
「もう1つは観念的なんですが、道路ってやっぱりスゴいんですよ。あれは建築物じゃなくて土木で、土木っていうのは耐用年数100年っていうのはふつう。そのエンジニアリングのスゴさとか、首都高作ったときの情熱とか…。建築はちょっと金持ちなら作れる。ところがどんな金持ちでも個人では道路は作れない。だからあれは国そのものであって、それを知ってるとそれが形ににじみ出てきてさらに面白いんですね」
団地への興味とはつながるところがあるんだろうか。
「僕が撮ってる団地は70年代のものなんですが、当時公団が作っていたものは”商品”ではなく”インフラ”だったんです。一方、80年代以降の民間のディベロッパーがやってきたのは商品。つまり団地は土木に限りなく近い。それが僕にとっては面白いんです。ジャンクションも土木で、そこには土木ならではの面白さがある」
とは言え、インフラや土木ならなんでも好きなのかというとそれはまったく違うという。
「僕はそのものも好きなんですけど、どっちかっていうとそれに対するみんなの視線とコミで興味がある。団地なんて都市部ならどこにでもあるけど誰も見てないっていう事態が奇妙で興味深い。だから最近流行の外郭放水路とか大深度地下とかはあんまり興味ない。あれはふだんみんな目にしてないからヒマラヤ山脈に行くのと同じなんですよね」
日常風景をある視点から切り出すことで、それを異化して見せるようなアプローチに興味があるということだろうか。
「マイルス・デイヴィスがブルースは旅だっていう主旨のことを言っていて。車窓から眺めてあの山キレイだなあっていうのは単なる観光であって、旅ではないと。旅っていうのはそこにいる人たちと関わることで自分が変容しちゃうものなんだと。それがあるかどうかでブルースかどうかが決まるんだと。」
「僕はだから大深度地下とかは物見遊山的になりがちというか、あれによって日常が変容することはないと思うんですよね。だけど地下鉄の通路のこのスペース気になるよねって言われたら、もう気になってしょうがなくなる。僕はそういうことの方に意味があるような気がする。団地のサイトでもいちばんうれしい感想は、全然建築とか興味なかったんだけど何気なくサイトをのぞいてから街中の団地が気になっちゃうんです、っていうもの。そんなときは僕の勝ちだなって思いますね(笑)」
◆Profile:大山顕
『住宅都市整理公団』の大山総裁として有名。2007年11月には『日本ジャンクション公団』総裁にも就任。近著に写真集『ジャンクション』。またDVD『団地マニア』を監修・出演
(2007/12/14 執筆)