ネットを武器に新世代ZINEカルチャー台頭!? / 野中モモ

90年代から活躍するサブカル重要人物のひとり、野中モモ
さんが最近注目しているのは再びZINE! ブログ時代になぜ
ZINEなのかを聞いて来ました。

テキスト:川崎和哉(Spoo! inc.

 LilmagはZINEのお店だ。ネット上にある。ZINEというのは、個人や小さなグループが作る雑誌のことで、ミニコミとか同人誌とかファンジンとかといったもの全般を指している。店主は野中モモさん。

 文筆・翻訳業で活躍する野中さんだが、彼女自身も同人誌でメディア作りに目覚め、90年代には知る人ぞ知るZINE「bewitched!」を作った人物。その後、個人サイト、ブログとサヴァイヴしてきた。その彼女がなぜいま再びZINEなのか?

「きっかけとしては、周りに作ってる人が現れ始めた。ばるぼら君[*1]とか、ネットで見つけた若い子たち。日本のメディアを介さずに海外のオルタナティブカルチャーにどっぷり、みたいな若い世代が育ってる。あと、昔はギターポップファンジンをやってていまはアニメ声優界どっぷりみたいな古い友達がペーパーを作って配っていたり。かと思うと即興音楽やサウンドアート周りの人たちが『三太』っていうドシリアスな評論誌を出していて。そういう、私と知り合いということ以外あまり接点のなさそうな人たちがそれぞれに面白いことをやってるから、『これを一緒に並べたい!』と思ったんです」

 にしてもなぜ紙のZINEなのか。 ネットだけではなぜダメなのか?

「ひとことで言うと、『モノとしてまとまっている魅力』ということなんですが、すごくいろいろな要素がある。ブログのすぐ消費されてしまうスピードの中で、じんわり体感できるということ。それから、ショッピングカートやネットバンクっていう新しい仕組みで数十部のコピー誌をやりとりするっていう組み合わせはこれまで存在したことがないでしょう? そこからなにが生まれるかを見てみたい。

 あと、いまは本当に表現のスピードが速い上にぜんぶ細分化されてしまっていて、なかなか違うジャンルの人同士が出会う場がない。そこで『なんだコレは!?』というような新鮮な出会いっていうのは、たまたま友達の友達だったとかそういうところからしか出てこないだろうなと」

 野中さんは「広い意味でのインディーズ活動」というものが好きなのだと言う。かつてはインターネットで何か活動をすること自体がインディーズ的な意味を持っていた。

「でもいま、ネットでちょっと何かやるとすぐ叩かれてしまう風潮がある。それでmixiの知り合いの中だけのコミュニケーションで終わってしまったりしがちですけど、知り合いよりもうひと回りふた回り大きいところに向けて発信することで新しい展開があるんじゃないかと思うんです。届くサイズを制限したり広げたり、その選択肢を増やしたい。既知と未知のバランスというか、相手の顔が見えるような見えないようなところ。距離とか範囲とかを意識して表現活動するといいんじゃないかと」

 そのためのフォームがまさにZINEなのだ。彼女にとってそれは、決して懐古主義のものではなかった。

*1: 著書『教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書』が有名。

Lilmag.jpgLilmag
ZINEのオンラインストア。『riot grrrlというムーブメント』がベストセラー。

Profile: 野中モモ
広報誌編集者を経てフリーランス。伝説のZINE?e-ZINE「bewitched!」主宰。1999年、大学院留学のため渡英。2005年までロンドンを拠点に日本の書籍・雑誌などに寄稿。現在は東京を拠点に、文筆・翻訳で活躍中。