編集者が面白がってる感じをもっと伝えたい / フイナム編集部

オンラインマガジンのひとつの原型を極めているメディア『フイナム』。なぜ「雑誌」のフォーマットにこだわるのか。編集部の平野正樹さんに聞く。

テキスト:川崎和哉(Spoo! inc.

 『フイナム』はいろんな意味で、とても雑誌らしいWebの雑誌と言える。まず見た目がとても雑誌らしい。大きく写真がレイアウトされた誌面。1画面は「見開き2P」。ページ下の両端にはノンブル(ページ数)が打たれているし、画面の中央には紙の切れ目を表すケイ線がわざわざ引いてある。ページをめくるように読み進む。スクロールは、しない。

 そして作っているのは、雑誌や書籍の世界で仕事をしてきた「編集者」たちだ。

「編集長の蔡(俊行)はもともとは『ポパイ』でずっとフリーの編集としてやっていた人間。で、僕はもともとクルマの雑誌を作ってました。エロ本を作ってた人間もいるし、コンビニに置くマンガ本を作ってた人間もいる。みんな出版社出身かな」

 単におしゃれでかっこいいメディアを目指してるわけじゃない。

「当然かっこよくはしたいし、色んな情報も網羅したいんですけど、もっと編集者が面白がって作っている感じ、何やってんだろうコイツら、みたいなのが絶対面白いと思うんです。そういう部分が僕らにはまだまだ足りないし、今のファッション雑誌にも欠けてる部分だと思う。

 編集長の蔡は『ポパイ』のいちばんいい時期に現場を仕切ってやってた人間なんで、そういうところはすごく言われる。つまんねえと。正面から行ってもしょうがねえじゃんと。斜めから行ったりひっくり返したりしてみろと」

 雑誌的なレイアウトにすると制約もあると思うのだが、そうしているのには理由がある。

「たしかに縛りはあるんですが、それが逆にいいなと思ってるんです。ウェブって階層がいっぱいあって、キリがない感じがある。誰かのコラムを読んでいると、他の人のコラムもたくさん並んでいて、それぞれにバックナンバーがあって、終わりがない。どこまで読んでいいかわかんない。雑誌だとページ数があらかじめ決まっているのがいい。

 でも、このスタイルにこだわってるわけじゃない。もっと面白くて見やすい方法があるなら今の方法を捨ててもいい。早く次の新しいスタイルを見つけてそっちに行きたい」

 『フイナム』には紙のフリーマガジンもある。取材時には、9月発行予定の 4号目の編集真っ只中だった。

「やっぱり紙、ひさびさに作ると面白いじゃないですか。iTunesでいくらでも音源買えるのに、何気にCD屋に行っちゃう。ネットでいくらでも情報拾えるけど、やっぱり本屋で本を買う。そういうのはあるんじゃないですか」

 彼らはウェブだろうと紙だろうと、とにかく自分たちが面白いと思っているその面白がり方のグルーヴみたいなものを形にして、読者と共有したいと思っているみたいだった。だからこそ、手ごたえとか存在感みたいなものを大切にしている。ウェブディレクターとはちょっと雰囲気が違って、編集者、という感じだった。

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フイナム

メンズのカジュアルファッションとライフスタイルを紹介する毎週更新のウェブマガジン。

Profile: フイナム編集部
雑誌ポパイのフリー編集者を経て、94年にスタイリスト事務所兼編集プロダクション(現在のライノ)を設立した蔡俊行氏が編集長。平野正樹氏は現場の責任者。ファッションブランドのマーケティング、カタログ制作も行う。