paperboy&co/家入一真氏

レンタルサーバー「ロリポップ!」や、オンラインショップサービス「Color Me Shop! pro」などナウでヤングなネーミングのサービスを展開する「paperboy&co(通称:ペパボ)」。今回は、そんなペパボの顔として個人でも多くのサービスを提供し、2月に上梓した著書『こんな僕でも社長になれた』が大好評の家入一真社長にご登場いただきました。はたして、ペパボが持つ独特の企業カラーの秘密とは!?

インタビュー:川崎和哉(Spoo! inc.
テキスト:小林邦昭(Spoo! inc.

▼既存のサービスに手を加え、新たな形で見せて人を驚かせたいんです

川崎:ペパボのサービス名はフリッパーズ・ギターからの引用が多いですが、家入さん自身がファンなんですか。

家入:実はフリッパーって、聴いたことがないんです。でもオシャレなのは知っていたので、そこからネーミングを拝借しました。他人から「あー、知ってるんだ」と思われたいんです(笑)。 最近になってようやくCDを買って聴き始めています。

川崎:そうだったんですか(笑)。それにしても、ペパボのサービスは印象的なネーミングが多いですね。

家入:ネーミングは皆でワーワー会議しながら決めるんです。僕の案はやっぱりフリッパーズからの引用が多いですね。「Color Me Shop! pro」とか、「Grouptube」とかですね。よく誤解されるんですが、最初のサービスである「ロリポップ!」は偶然なんです。これは、映画「スタンド・バイ・ミー」の中で歌われている有名な曲から取りました。ユーザーからの指摘で気づいたんですが、実はスペルが間違っているんです。正しくは”lollipop”と「L」を2つ続けなきゃいけないんですけど、今は造語だということにしています(笑)。

川崎:ネーミング会議はどんな状況ですか。

家入:会議はアツいですね。うちはサービス名やデザインを先に決めてしまい、そこから具体的な中身を作っていくことが多いんです。名前やデザインが先にないと、その中身がイメージできなくて作りづらいんです。みんなそうやってるのかな、と思っていたら他社は開発者が主体と知って驚きました。

川崎:ネーミングもそうですが、デザインテイストも独特ですね。

家入:若い人や女性に向けたデザインを意識しています。男性が考える「女性が好きなデザイン」ですね。

川崎:既存のサービスに手を加え、新たなサービスとして提供する。ペパボではこのパターンが多く見られますが、なにか理由があるのですか。

家入:そうですね。それまでにないサービスを1から作るのではなく、既存のサービスに手を加えて違う形に見せる。そこに快感を覚えます。人から「こーいう見せ方があったか!」と驚かれるのが好きなんです。それに、ビジネスとしてもリスクが低いし、他でも応用が効きます。「ロリポップ!」のように、あそこまでキャラが立っているレンタルサーバーは他にないですよね。そう考えると、「男前豆腐店」さんなんかはうちと近いのかなと思いますね。

▼僕は社長よりも、ものを作るクリエイターでいたいんです

川崎:「ロリポップ!」が完成するまでの経緯は本で読みましたが、他の多くのサービスはどういうときに思いつくんですか。
※家入社長の著書「こんな僕でも社長になれた」

家入:自分たちが利用して納得がいかないまま使っていると感じるのであれば、自ら開発してみます。これが一番の動機ですね。そういう理由で最近作ったものは、ソーシャルブックマークの「POOKMARK Airlines」です。それまでは他サービスを利用していたんですが、どうしても技術寄りで敷居が高くなっていた。そこを改善したつもりです。自分たちが一番のユーザーであれば、要望も汲み取りやすいですからね。

川崎:家入さんは個人でも色々なツールを公開してますが、すごいペースで作ってますね。

家入:ネーミング会議でちょっとしたアイディアが出てくるので、すぐ作ってしまいますね。基本的に”今すぐ使ってもらいたい!”と思ったスピード重視のサービスは個人でやってます。最近は小さなサービスを多く出していますが、時間をかけて大きいサービスを出したいですね。忘れられるのが怖いという恐怖心があって、小さいサービスを出し続けてしまうんです。最近は、ツイッター絡みで出すとウケがいいので「ヌイッター」とか「ニコったー」とか、「アリッター」とか狙ってみました(笑)。どれも数時間で完成させました。

川崎:色々なサービスを開発するクリエイターと、経営者としての社長、両方の顔があるからバランスが取れているんですか。

家入:どうなんでしょう。自分としては社長の前にものを作るクリエイターでいたい、という気持ちがあります。正直、僕は社長業をこなせている自信がないんです。ビジョンを語るとか、新規事業の売り上げを予測するとか、そういったことが苦手ですね。

▼今後はネット以外への進出もしたいと考えています

川崎:ペパボは有料サービスが多いですね。GIGAZINEの取材を見たら売り上げの70%が「ロリポップ!」という話でしたが、無料サービスはどうですか。

家入:僕は広告モデルの複雑なお金の流れが嫌いだったんです。有料サービスであれば、流れは2方向しかなくシンプルでいいですよね。でも、将来を考えたときに有料会員を増やすだけでは安定してるけど急成長が見込めないんです。そこで今は広告モデルに力を入れるために、「JUGEM」や「POOKMARK Airlines」を始めました。

川崎:「JUGEM」はPVも相当ありそうですが、広告の収益は大きいんですか。

家入:弊社全体の売り上げに占める割合も増えて、おかげさまで黒字になっています。数年前までは「ブログなんて儲からない」という風潮でしたが、今はそうではありません。弊社事業の3本柱か「ホスティング(レンタルサーバー)」、「コミュニティ(ブログ、SNSなど)」、「EC支援(ショッピングカート、オンラインモール)」であり、その中でもメインがホスティングなんです。なので、残りの「コミュニティ」と「EC支援」事業については、今後の売り上げを伸ばすことが目標です。

川崎:では、これからの有望サービスを教えてください。

家入:大きくなるとしたらECですね。「Color Me Shop! pro」の店舗数は楽天に近づいてきています。楽天に店舗を持つまでもない小規模なお店、主に個人がターゲットですね。そうなると、ライバルはヤフオクと言えます。

川崎:家入さんの著書でくり返し書かれている「逃げるのは悪いことじゃない」というメッセージがありますよね。社長は逃げられない状況もあると思いますが、それがプレッシャーになることはないんですか。

家入:社長としてのプレッシャーはほとんどありません。周りの人間が僕を理解してくれているので助かっています。皆の支えのおかげでストレスなく過ごせているようです。でも、僕はしゃべるのが苦手なので、毎週の朝礼が苦痛ですね。日曜の夜が憂鬱で腹痛になったりするくらいなので、ここ何回か朝礼に参加していなかったら取締役に怒られました(笑)。もともと、朝礼をやろうと言い出したのは僕なので無理もないですが。

川崎:具体的に朝礼ではどんな話をするんですか。

家入:前回は潮干狩りに行って車が壊れたときの話をしました。日々の話から教訓的な内容に持っていきたいんですが、なかなか難しいですね。いつも事実を話して終わってしまいます(笑)。

川崎家入さんのサイトを拝見すると、たくさんの写真が掲載されていてどれもお上手ですね。写真がお好きなんですが。

家入:写真は僕の中で長く続いている趣味ですね。大人になってから始めたんですが、今では子供の写真を撮るのが趣味です。ちなみに僕の写真の師匠は森友治さんという、ネット上で有名なカメラマンの方です。

川崎:最後にペパボの今後を教えてください。

家入:自分としては、ネットだけにこだわるつもりはないんです。会社としては、すべての表現者の感性を引き出すことを目的として、「We Host your Creativity.」というキャッチコピーを設けていますが、そこに則っていればネット以外への進出もあります。個人的にはゲームを作りたいですね。プレイステーション2で発売された「塊魂」はうちがやるべきだったと、今でも思っていますから(笑)。あとは、セミナーを開きたいと思っています。技術的な話よりもサービスを生み出すノウハウを教えて、より多くのWebクリエイターに「ユーザーからの声を拾うという快感」を広めたいんです。すでにそのための場所も用意済みです。
※塊を動かし周りのものを巻き込み大きくしていくアクションゲーム


家入さん、素敵なイラストをありがとうございます!