ニコニコ動画/ひろゆき氏

YouTubeに代表される動画サイト隆盛の時代に、今年初め突如として出現した「ニコニコ動画(β)」。投稿された動画に字幕でつっこみをいれられるというスタイルが見事に大ヒットを博し、サービス開始からひと月ほどで一日2700万のPVを記録するほどに成長しました。DDoS攻撃により、一時は閉鎖の憂き目にあうものの、自前の動画投稿サイト「SMILEVIDEO」とともに「ニコニコ動画(γ)」として即座の復旧を遂げました。今回は、そんな飛ぶ鳥を落とす勢いのニコニコ動画の仕掛け人、ひろゆき氏にご登場いただきました。

インタビュー:川崎和哉(Spoo! inc.
テキスト:小林邦昭(Spoo! inc.

▼ニコニコ動画での僕は、主に会議で小言を言う係です

川崎:ニコニコ動画のアイディアが生まれたきっかけを教えてください。

ひろゆき:もともとは名古屋大学で動画にコメントを載せるプロジェクトがあったんですが、それが面白いということでドワンゴでもプロトタイプを開発してみることになったんです。僕はそのときニワンゴで2ちゃんねるの実況板をケータイに移そうとあれこれ動いていましたが、双方とも動画に自分の感想をつけられる点では共通しているので、それがきっかけになりました。去年の10月にプロトタイプを開発して、12月末には仮オープンにこぎつけました。デザインは後回しにして、技術的に可能だから出しちゃえ! 的なノリでした(笑)。

川崎:それはものすごい短期間ですね。ニコニコ動画におけるひろゆきさんの立場を教えてください。

ひろゆき:主に会議で小言を言う係です。「これはこうなって失敗する」とか、悲観的なことを言いがちなんですよね。動画にコメントを書く、という行為自体の面白さが広まるにはある程度のユーザーが必要ですから、ニコニコ動画の面白さが認知されるまでにはある程度の時間がかかると思ってました。でもふたを開けてみると、みんな思いつきでポンポン書くものだなと感じましたね。

川崎:ユーザーから見れば、ひろゆきさんが関わってるという事実もプラスに働いたと思います。

ひろゆき:2ちゃんねる的な、「匿名でなにを書いても許されるノリ」が受けたというのも多少あると思います。もっとお堅い大手ポータルが主催していたら、どうでもいいコメントとか書きづらいですからね。

川崎:そういった2ちゃんねるユーザーに向けた告知は行ったんですか。

ひろゆき:特に正式な告知は一切していません。僕がブログでちょこっと紹介するとか、その程度ですね。公開が年末だったんで、なにもすることがないヒマな人たちに受けたんでしょうね(笑)。わりと年末ってサイトが盛り上がる時期なんですよね。

川崎:ひろゆきさん自身はニコニコ動画のリリース時に、動画にコメントを入れる行為が面白いと感じていたんですか。

ひろゆき:もともと2chの実況板では、テレビを見ながらつっこみをいれるという文化があったんです。そのつっこみの対象がテレビじゃなくても、YouTubeでもいいじゃん、ということです。テレビの実況は皆が一斉に同じ時間に書き込む必要がありますが、YouTubeの映像であればオンデマンドでつっこめますからね。

川崎:そのYouTubeについて、ひろゆきさんはどう思われますか。

ひろゆき:YouTubeはよく見てますね。たけど、僕自身が同じサービスをやろうとは思わなかったんです。動画のインフラのコストって、ものすごく高くつくから無理だろうと思ってました。

川崎:結果として、ニコニコ動画とSMILEVIDEOはひろゆきさんが関わるサービスの中でも2ちゃんねるに次ぐ知名度を得ましたよね。

ひろゆき:実はニコニコ動画も僕がメインで頑張ったわけじゃないんです。2chのスクリプトは僕が書いたんですが、今回はまったく書いていません。スタッフが優秀なので助かっています(笑)。

▼今後は公式の有料コンテンツも考えていますが、詳細はまだ秘密です(笑)

川崎:僕がすごいと思ったのは、公開時に大きな話題を呼んだニコニコ動画が、一時休止して復活後に、以前にも増して話題になっているというところなんです。

ひろゆき:そこはスタッフが徹夜をして頑張った甲斐がありましたね。You Tubeからアクセスを遮断されていることに僕らが気づくまで時間がかかったんです。それで、さあどうするという会議を開いて「1.あきらめる 2.国内の動画サイトに頼る 3.自前で動画サイトを設ける」という3つの選択肢を検討しました。2ではニコニコ動画のユーザー数を支えるにはインフラが足りていない、それで自前でやるにはまずサーバーが必要ということで、さくらインターネットさんにお願いしました。中3日で10台のサーバーを用意してもらい、その間にシステムを開発して、みんなで徹夜作業。何とか復活することができました。

川崎:You Tubeから遮断された理由は、やっぱり負荷が大きすぎるからだったんですか。

ひろゆき:You Tubeにはなんのメリットもありませんからね。広告を見るわけでもないですし、ニコニコ動画のユーザーからすれば、You Tubeの動画を見ている、という意識もないですから。ただ、動画再生数だけはYou Tubeに反映されるんです。You Tubeの人気動画トップ10のうち、あきらかにニコニコ動画からのアクセスだろうと思われる作品が8つもありました(笑)。

川崎:SMILEVIDEOが立ち上がり、前よりもサービスが充実しましたね。

ひろゆき:今はクローズドサービスですが、いつかはオープンサービスにしたいですね。ただインフラコストが高くなってしまうのが問題です。ニコニコ動画をキラーコンテンツにして、SMILEVIDEOで日本のYou Tubeを目指す道も考えたんですが、その後どうやってコストを回収するかを考えていなかったんです。You Tubeもグーグルに買収されたから存続しているわけで、本来は赤字モデルなんです。動画投稿サイトはユーザーへのインパクトは大きいですが、企業としてどうなの? という問題が残ります。

川崎:ニコニコ動画のビジネスは広告メインなんですか。

ひろゆき:今のところはそうですが、動画の広告って成功例が少ないんです。バナー広告はデザイナーひとりで作れますが、動画広告となるとそうは行かない。普及までには時間がかかると思います。今は公式の有料コンテンツも考えていますが、詳細はまだ秘密です(笑)。

川崎:ニコニコ動画のコメントは内容によって削除してるんですか。

ひろゆき:基本的にコメントは一定数を超えると流れていくので、積極的に削除しなくても消えていきます。ただ、洋画に対する字幕など、非常に有益なコメントまで消えてしまうので、その判断をどうするのかが難しいところですね。流すコメントと、残すコメント、いいユーザーと、悪いユーザー、それらをどうやって判別するのか? 2ちゃんねるでは名無しさんの書き込みでも、ある程度発言の身元がわかるのですが、ニコニコ動画は発信者が外からではまったくわからないんです。

川崎:今後はどの程度までサービスの拡大をする予定ですか。

ひろゆき:現在は、777777万番までは24時間開放して、深夜2時?19時の間限定で100万番まで開放しています。現状は1日1万ずつ会員が増えているペースです。僕の予想では100万人でユーザーの伸びは鈍化すると思います。Webで動画を普通に見られて面白いと感じる人は、家にブロードバンドがあって時間の余裕がある、という具合に数が限られているでしょうから。今はすごく動画を見たい人が見れない状況なので、そこは早く救済したいですね。

▼来年は海上自衛隊のCMコンペに出場したいです

川崎:ニコニコ動画の中でもユーザー同士の交流が生まれていますね。

ひろゆき:ユーザー同士で自発的にオフ会を開いていますね。カラーバーが出ているだけの雑談用動画や質問用動画を用意して、積極的な交流が生まれています。CD化もされた「レッツゴー!陰陽師」や、まったく別のアニメを複数合成したMADアニメなど、人気のコンテンツも多数あります。
※ 家庭用ゲーム『新豪血寺一族 ?煩悩解放?』で流れるPV

川崎:ニコニコ動画発の面白いカルチャーが生まれていますね。

ひろゆき:You Tubeは英語ということもあり、日本人のコメントがつきにくかった。ニコニコ動画はどんなショボいものでも、それなりの反応が帰ってくるんですね。作り手に反応が伝わりやすいので、それがいい循環を生み出しています。海上自衛隊が毎年CMコンペを開催しているんですが、ニコニコ動画のユーザーにそれを作ってもらって、優秀作品は実際にコンペに提出するとかできたら面白いですね。ぜひ来年に実現したいです。

川崎:どんな動画にもコメントがつくんですか。

ひろゆき:ユーザーは動画の面白さよりも人との会話を望んでいるんです。友達とテレビを見ている時って、テレビの内容よりも会話が盛り上がるかどうかが大切ですよね。だからYou Tubeの面白い動画が無くてもユーザーはそんなに離れないんです。なんでもいいから動画を見ながらコメントをつけたい人が集まる場になっています。でも、つまらない動画にはかなり辛辣なコメントがつきますよ。先日、自分の講演がUPされていたんですが、僕の発言に字幕がつけられているのを見てはじめて自分の早口さに気がつきました(笑)。ちょっと反省しました。

川崎:今後、新機能を追加する予定はありますか。

ひろゆき:今後は文字だけでなく音でのつっこみも考えています。現状は今のインフラをどう維持するか、いかに負担の少ないプログラムにするか、技術面の対応に追われているので新サービスの提供にはしばらく時間がかかりそうです。でも、優秀なスタッフが多いので、各自で動いて上手く進んでいますね。ニコニコ動画のGIFアニメーションのロゴもスタッフが自発的に作成したんです。200種類以上あって、かなり好評です。本当にスタッフには恵まれています。

川崎:では、ニコニコ動画以外で気になるサービスを教えてください。

ひろゆきSecond Lifeが流行っていますが、正直僕は面白いと思わないんです。富士通がハビタット という同様のサービスを15年以上前からやっていますからね。それが、今でも続いていることがスゴイ。当時からアバターも電子通貨も取り入れています。だから僕の中では非常に評価が高いんです。もっと世間に認められていいと思いますけどね。
※ 現在は「J-チャット」と名前を変更してサービス継続中

▼今のニコニコ動画は「とりあえずユーザーを集める」という段階です

川崎:ネット以外で気になることはありますか。

ひろゆき:最近はモンスターハンターポータブルに夢中です。2/22に買ってプレイ時間は350時間を越えました。僕は昔からゲームが大好きで、当然Wiiの動向も気になるんですが、僕の周りの人間のWii熱は冷めてきていますね。電源を入れる機会が減ってるんです。Wiiスポーツは面白いけど、2.3週間で飽きてしまう。あとはファイヤーエムブレムくらい。ソフトが少ないのが問題ですね。

川崎:ゲームを作るつもりはないんですか。

ひろゆき:ゲームは作る側にまわると途端に楽しめなくなってしまうんです。サンプルでいろんなソフトが目の前にあると、興ざめしてしまいますね。

川崎:今のWebの流れについて、思うことを教えてください。

ひろゆき:今のネットサービスって会社が作っているものが多いんですけど、会社が作るとユーザーに商品や利益を提供するサービスになりがちですよね。僕はそんなに物欲がないので、そういったサービスは興味がないんです。純粋に「見ていて面白いサイト」というものが減ってきた気がします。ブログが普及する前は、個人でも作り込んだサイトが多かったんですけどね。

川崎:ニコニコ動画は会社で運営しているとはいえ、純粋に楽しいことを追求していますね。

ひろゆき:どうすれば利益が出るかなんてわからないですからね(笑)。会社で運営していますから、利益を得る方法がわかればそちらに向かうこともあるでしょうけど、今は「とりあえずユーザーを集める」という段階なので、皆の望むコンテンツを提供しているつもりです。そういった意味では、僕らとユーザーが同じ方向を向いていると言えますね。