honeyee.com/鈴木哲也編集長

2005年9月のオープン以来、ファッションをはじめとしたライフスタイル情報を提供し続けるWebマガジン「honeyee.com(ハニカム)」。日本におけるストリートカルチャーの中心人物、藤原ヒロシ氏が本格的にWebに進出することでも話題となりました。第3回のゲストには雑誌の世界を知り尽くした鈴木哲也編集長をお迎えして、ハニカムだけが持つエッジ感と強さの秘密に迫りました。

インタビュー:川崎和哉(Spoo! inc.
テキスト:小林邦昭(Spoo! inc.

▼二次情報ではない、ハニカムが発信源となるエクスクルーシヴな情報で勝負しています

川崎:スタートから1年で月間800万のPVを出していますが、これはすごいことですよね。

鈴木:正直、月間800万のPVと言われても、Webの世界だといまいち実感がないんですよね。売れてる雑誌であれば本屋に平積みされるので視覚的にも実感がありますが。

川崎:今やWebマガジンを代表するサイトになりましたが、スタート時の状況を教えてください。

鈴木:立ち上げ当初は、Webでビジネスをするのか? Webで新しいメディアを始めるのか? あるいはその両方なのか? その辺のバランス感が課題でした。ハニカムは、藤原ヒロシ、清永浩文、中村ヒロキの3人が発起人となってWebでの活動をやっていこう、というスタンスがある以外はバックに大きいスポンサーがいるわけでもないんです。ある意味、インディーズ雑誌と同じ感覚です。コンテンツとしてはブログ、EC、Webマガジンが三本柱としてあるんですが、その比重もまったく未定でした。

川崎:ハニカムには従来のWebにも雑誌にもなかったエッジ感がありますね。

鈴木:雰囲気で押し切っている部分もあるんですけどね(笑)。私見ですが、Webの世界ではコピー&ペーストというコトバに象徴されるように、オリジナルのネタが少ない気がします。そこで、ハニカムにしか載らない、ハニカムが絶対に一番早い、エクスクルーシヴな情報を伝えていきたいというのは意識しています。もちろん、例えば海外の面白いネタを二次情報として紹介するのは有意義なことだと思います。でも、僕らとしてはオリジナルのネタで勝負して「ハニカムはハニカム」というスタンスでいく方が逆にやりやすいし、意味があるかな、と思うんです。

▼ハニカムとブログの書き手、両方の相乗効果を狙っています

川崎:エリック・クラプトンから企業の社長まで、ブログの人選は幅広いですね。

鈴木:ブログの人選はバラエティーに富むよう、ある程度は意識しました。最初は、僕らに近い人から声をかけて集めたんですが、今では参加したいという人も増えてきました。ハニカムのブログに参加することが書き手にとってプラスとなり、またその逆もしかりという感じで、ハニカムとブログの書き手の相乗効果が期待できる良いスパイラルを生んでいますね。そこからいろんな人を巻き込んで、ハニカムならではのオリジナリティを出せればと思います。

川崎:ブログを書いてもらうに当たって、執筆料は払っているんですか。

鈴木:基本ノーギャラです。今はまったく好きに書いてもらっています。

川崎:更新頻度もかなり高いですが、書き手のモチベーションを維持させるコツがあれば教えてください。

鈴木:やっぱり、ブロガー同士の相乗効果だと思いますよ。ハニカムのブログに参加している人たちは、概ね更新頻度が高いので、それに触発されるんじゃないでしょうか。

▼将来はコンサルティングやプロデュースも手がける、クリエイティブ総合カンパニーを目指します

川崎:ハニカムは今までにないタイプの広告やブランドとのコラボレーションに積極的ですが、金銭的には回っているんですか。

鈴木:開始から1年でようやく赤字にはならない程度ですね。今でも、少人数かつ、少予算でやっています。当初はサイト自体もどこまで規模を大きくできるのか、広告がどのくらい取れるか全く未知数でした。コラボレーションをはじめとする企画については、発起人の3人を含めた会議で色々話し合います。会社組織だけれど、ビジネスライクではないフラットな集団なんです。ミーティングの席ではみんなでざっくばらんに意見交換してますよ。ちなみに、2月に「ハニマグ」という雑誌を出すんですが、創刊号は春夏ファッションの情報で、秋に発売予定の2号で秋冬特集を載せる予定です。

川崎:ハニカムには、あまりWebに出稿しないクライアントのバナーが掲載されています。これは自社で営業をされてるんですか。それとも、優れた代理店と組んでいるんですか。

鈴木:Webの広告代理業とコンサルティングを行っている会社と協力関係でやっています。もちろん、自分たちでも広告営業的なこともやっています。ハニカムをサポートしていただいているクライアントは、ハニカムが音楽やファッションの情報だけではなく、ライフスタイルそのものを提案するメディアを目指している、ということを理解してくれているんです。そこが大きいと思います。

川崎:広告もブログも好調のようですが、ECの状況を教えてください。

鈴木:ECもようやく整ってきました。11月にリリースしたセイコーとハニカムのコラボレーションによる時計があるんですが、これは開発段階から携わってきました。今後は時計だけに限らず、ケータイのようなプロダクツからレストランやホテルまで、コンサルティングやプロデュース業を広げたいですね。特にコンサルティングは是非やりたいんですよ。実はこの店ハニカムがやってるんだ、的なサプライズを見せたいです。目指すところは、クリエイティブ総合カンパニーなのかな、とも思います。

川崎:なるほど、ハニカムはWebコンテンツというよりは、面白くてクリエイティブなことをやろうという有機体みたいですね。

鈴木:ハニカムのように「何かやりたい」という人間が集まり表現する場として、Webは最適のメディアだと思います。そういう意味で、僕らは時代の恩恵にあずかっていると思います。

▼1つのジャンルに囚われず、どんどん新しいカルチャーを取り入れていきたいです

川崎:ハニカムの読者のプロフィールを教えてください。

鈴木:大まかに言って、都内、もしくいは大都市圏在住で年齢は20代後半?30代前半がコアですね。Webは紙媒体と比べて年齢層が上がりますね。僕らが考える理想のターゲットを一言で表せば、僕らと価値観を共有できる人です。僕らが面白いと思ったものを、一緒に楽しんでくれる人。それに尽きます。たしかに、僕らにはファション系の人を中心としたある一定のターゲットが既に存在するんですが、そこだけに絞りたくないという思いはあります。音楽であれ、アートであれ、もっと新しいカルチャーを取り入れて新規のターゲットを開拓したいんです。

川崎:それが成功して、ある種のメジャー感を持っているところがハニカムの凄い点ですね。

鈴木:どんなジャンルでも、その道に走れば走るほど、1つのジャンルに収まってしまっている感があります。いまはアンダーグラウンド的なものほどある種、保守的だと思うんです。自らを定義づけすることで収束してまわりを見ない、受け入れようとしないというか。音楽の例で言えば、新しいサウンドが流行ると、すぐに一部のコアな人たちから否定のムーブメントが起こりますよね。ハニカムはそういったスタンスではなく、常に「いま」面白いことを巻き込んで1つのジャンルに収束しないものを目指しています。

川崎:紙媒体からWebの世界に移って、「ここが違う」と思った点はありますか。

鈴木:ITビジネスの世界ではメディア事業に対して「器をとりあえず作れば後は何とかなる」、というスタンスがまかり通ってる部分がある気がします。もっとも、雑誌の世界でも近い状況が現在はあるのですが。けれど、本来は「中身があるから、容器を作る」べきだと思う。ただ、そういった状況だからこそ、僕らのアイデンティティを発揮できるエクスクルーシヴなネタで勝負すれば勝てる、という感触はあります。

▼バーチャルな世界が身近になるほど、リアルな体験の需要が高まるでしょうね

川崎:高城剛さんのWeb2.0についての考察は、非常に興味深かったです。
※詳しくはこちら「IT is DEAD!?

鈴木:これまでに高城さんは何度も取材していますし、高城さんからもハニカムのことを色々と気にかけていただいていたんです。時期的にもWeb2.0というキーワードが盛り上がっている最中に高城さんが新刊を出すということで、これ以上ないタイミングで良い特集が組めたと思います。これ以前に藤原ヒロシ×高城剛という対談で、拝金主義的な風潮を批判する特集を組んだんですが、これが下地になりましたね。いずれもハニカムらしいネタが提供できたと思います。僕らが得意としているファッションや音楽以外でも1つの存在感が出せました。同じ意味では、ゲレンデ・ヴァーゲンの特集も手応えを感じましたね。僕らの周りではとても人気のあるクルマなんだけれど、一般的にはそんなにフィーチャーされていない。僕らの日常では面白いと感じるけれど、メディアへの露出が少ない、というわけです。なので、ピックアップしました。今後もそういったネタで特集を組んでいきたいです。
※詳しくはこちら「Addicted to “G”

川崎:鈴木さんの気になるWebサイトを教えてください。

鈴木:気になるサイトというより、インターネット全般がメディアとしてどういう存在感を持つようになるのかが気になります。世論や社会に影響力を持つブログ文化が日本にはない、という意見がありますが、それって2chが先にあったからだと思うんです。TV、新聞といったマスメディアへのアンチ、あるいはオルタナティブなメディアとしてのインターネットというのは、やはり2chが担ってきた。反社会的な部分も含んでいるわけですが、では、そこでいう「社会」とは本当のところ何を指すのか、ということも考えなければフェアではないと思います。「ネット社会」対「リアルな社会」という対立は実は成り立たない、リアルな社会のなかにネット社会もきっちりと含まれているじゃないか、と個人的には思います。

川崎:では、Web以外で興味のあるものを教えてください。

鈴木:最近はWeb上の音楽配信が一般化してきましたが、そうなることで逆にライヴへの需要が増えるんじゃないでしょうか。昨今のフェスブームもその現れだと思います。バーチャルな世界が身近になればなるほど、リアルな体験の需要が高まる。Webショッピングがより浸透すれば、スペシャルなアイデンティティを持った実店舗での買い物が貴重になるんだと思います。なにか面白いことや、役立つ情報を求めて街を歩くのではなくて、街を歩くという行為自体がエンターテインメント化する。これは、高城さんも言ってますが僕もそう思いますね。

川崎:情報と違って、人の体験だけはコピーできないからでしょうね。

鈴木:でも、そこにビジネスが絡んでくると、そこでも「その体験は本当にリアルなのか? 作られた現実だろう」という意見がすぐに出てくると思いますが…。