GIGAZINE/株式会社OSAの山崎恵人氏

2000年4月1日より運営している老舗の人気オンラインマガジン「GIGAZINE(ギガジン)」。個人サイトからはじまり、今では月間の総PVが1000万を超える日本最大級のニュースサイトに成長し、多くのブロガーに影響を与え続けています。今回は、そのGIGAZINEの編集長にして、株式会社OSAの代表でもある山崎恵人氏をクローズアップしました。

インタビュー:川崎和哉(Spoo! inc.
テキスト:小林邦昭(Spoo! inc.

▼小学生の頃から新聞やニュースが大好きでした

川崎:10月のGIGAZINEのPVですが、ユニークユーザーが約438万、総PVが1200万というのは凄いですね。これは、ビジネス的にはどうなんですか。
※:11月の時点ではユニークユーザーは約505万、ページビューは1385万

山崎:現状、この数字ではまだまだ商売にならないですね。広告だけで運営するならばPVは今の100倍必要です。物販をやらずに、GIGAZINE1本で会社として運営していくのであれば、ヤフーなどのポータルサイトクラスのPVが無いと厳しいですね。だから、こういうインタビューでは必ず赤字ですと答えているんです(笑)。先行投資の回収ですらできていない状態ですから、もっと規模を大きくすることが目標ですね。

川崎:山崎さんがGIGAZINEを始められた動機を教えてください。

山崎:僕自身が小さい頃から新聞やニュースが大好きだったんです。学校でも新聞委員をやって、印刷と製本も自分でやってました。大学に進学して本格的にPCを使ってニュースを書くようになりました。PCを使えば記事を書いて、あとは手軽にUPできますからね。僕はどちらかといえば、記事作成よりもネタ収集が好きなんです。現状、GIGAZINEの記事の6割は自分で書いているんですが、いずれは100%ネタ振りに徹したいですね。僕が記事を書かなければGIGAZINEが続かないというのであれば、それは僕個人=GIGAZINEであって会社とは言えません。僕が記事を書かなくてもGIGAZINEが回せるような状態にするのが理想です。

川崎:現在、GIGAZINEの編集部は何名体制なんですか。

山崎:会社のスタッフは10人未満で、そのうち4人がGIGAZINE専属の編集兼記者です。これは、大手ニュースサイトの1部門の編集の数とほぼ同等ですね。

川崎:最初からGIGAZINEをビジネスにしようという気持ちはあったんですか。

山崎:ビジネス化はまったく考えていませんでした。単純に僕自身が記事を書かずにはいられなかったんです。業というかカルマというか(笑)。最初は、ネット上の面白い情報を当時使っていたブラウザであるMozillaのブックマークにどんどん入れて、自分なりにまとめて記事にして役立てたいと考えていました。昨年までは「大きくしよう」という意図はまったくなかったんです。宣伝のリンクも貼らず、「いい記事を書けば、いずれは人が来るだろう」と考えていました。書き続けていれば、やがては口コミが広まり人が来てくれるだろうと。ネットサーフィン中にフラっと立ち寄った人と違い、口コミで来てくれる人は本当に興味を持ってきてくれる人ですから。

▼GIGAZINEをブログ化したら、それだけでPVが22倍になりました

川崎:今年に入って急激なPVの伸びを見せましたよね。

山崎:それはいわゆる、「キャズム」を越えたんでしょうね。それ以前も定期的に月間30万のPVがあったんですが、まだ知る人ぞ知る的な位置づけでした。PVが伸びたきっかけは、単純にブログ形式にしたからです。数字にして、約22倍の伸びですね。以前は1つの記事を表示させていたら、前後の記事が見えなかったんですが、ブログ形式にして記事が連携して非常に見やすくなったんです。昔は掲示板のスクリプトを自分でカスタマイズしてページを作成していました。自分たちもブログ化することで、まさかここまでの伸びを見せるとは思いませんでした。

川崎:今ではテクノラティのランキングでは常に2位をキープ、はてなのブックマークでも必ず上位ですよね。

山崎:そうですね。でも上が「痛いニュース(ノ∀`)」で下が「ガチャピン日記」という、全くの異分野ですからね。同ジャンルではではダントツ1位だという自負はあります。はてなブックマークなんかには以前から入っていたようですが、僕自身、外付けHDDのケースが今のようにメジャーになる3年前から「欲しい、欲しい、あれは当たる」と言ってるようなアーリーアダプターなので、同じ琴線の人に引っかかるんでしょうね。

川崎:GIGAZINEって、ネタのセレクトが独特ですよね。大手ニュースサイトと同じ記事もあるけど、GIGAZINE独自の記事も多いですよね。

山崎:たとえば、新聞は客観性や公平性を重視していますが、結局それは主観の入った客観性や公平性なんです。どうしても偏向してしまうんです。ですが、無理してそれを矯正しようとすると今度は1面記事がどれも同じという記事の均質化が起こる。そうなったとき、読者がどの新聞を読むか選ぶ基準になるのは1面ではなくて、その他の部分ですよね。ですからGIGAZINEはそこで勝負をしてるんです。大手は「うちのサイト・新聞さえ見てくれればいい」的なスタンスですが、GIGAZINEは「他を見たら、ついでにうちも一緒に見てね」的なスタンスなんです。僕は大手のニュースサイトを全部回って見ていますが、似てるニュースを比較して記事のクオリティを調べています。どこもかしこも取り上げるネタの場合は、1番クオリティの高いものをGIGAZINEで書けないのであれば載せてもしょうがないと考えているので、そういった記事を切り捨てることも多々あります。そこがGIGAZINEの個性にもなっているんでしょうね。

川崎:その、大手とは一線を画すニッチなネタが一般に受け入れられている点がすごいですね。

山崎:うちは、書き手が絶対的な自信を持った記事であれば、編集長である自分のフィルターを通さずにGOサインを出します。それは、スタッフのことを僕が信頼しているからです。GIGAZINEはニュースサイトとしては未熟かもしれませんが、セレクトの眼はプロだという自負があります。今のスタッフは全員長い付き合いのある知りあいで、元ニートや、就職活動全敗の人間もいますよ。しかし、ネタのセレクトと記事を書く実力は確かです。今後はどうやって増員するかがカギですね。

▼GIGAZINEの情報源はWebそのものです。全てを見ているから、他が取り上げていないネタも拾えるんです

川崎:今後、GIGAZINEで積極的に取り上げていきたいジャンルはありますか。

山崎:今後はゲーム、アニメ、マンガの他、東急ハンズやロフトのグッズを扱いたいですね。デジタルガジェットではなく、あくまで雑貨です。それとやはりモバイルは外せないですね。モバイルに強い編集は既にいるので、近いうちに実現したいです。でも、書くからにはそれなりの質と責任が求められますからね。うちはスタッフに要求するものも多いですが、その分ライターに権限を委譲してある程度自由にやらせています。スタッフはPVとユニークユーザー数で評価しています。大体僕が1位なんですが、たまに僕を抜くスタッフもいますよ。

川崎:GIGAZINEを見ていると海外のマイナーなサイトのネタがありますが、そういうネタを仕入れる巡回ルートってあるんですか。

山崎:ネット上の有名なブログ、ニュースはすべて見てます。だから、情報源はWebそのものといってもいいですね(笑)。有名なサイトを見ているとどうしても似たり寄ったりの内容が出てくるんですね。そうやってすべてのサイトを見ているから、どこも取り上げていないネタがわかるというのもありますね。僕の趣味はWebそのもので、24時間365日張りついています。だから、どんなに優秀でも24時間PCに触れていられない人はうちでは勤まりません(笑)。GIGAZINEの運が良かったのは、そんなふうにフル稼動できる人員が揃ったことです。そこは本当にラッキーだったと思います。

川崎:では、今後本格的にGIGAZINEをビジネスとして展開するための収益源を教えてください。

山崎:収益はリスクヘッジのため3本柱で考えています。まずは広告です。しかし、インターネット広告費が占めているのは日本の全広告費の10%以下なんです。その小さい規模の中、広告1本だけでやるのは事実上無理です。もうひとつは物販です。広告を出される価値があるということは自分でものを作って宣伝すればもうかる可能性が非常に高いということなので、物さえ作ればすぐにでも始められます。最後は有料コンテンツです。でも、有料コンテンツが成功した試しはないんで、これについては完全に思案中です。

川崎:海外ではブログメディアが隆盛ですが、これについてはどう思いますか。

山崎:海外のブログメディアには広告代理店がいる、というのが大きいですね。向こうでは広告を取ってきてくれる代理店がいるので、記事の執筆だけやればいいんです。日本でもそういった体制作りが今後求められるでしょうね。

川崎:GIGAZINE以外で、興味を持っているWeb上の動向やサイトはありますか。

山崎:直感的な予感としては、マイクロソフトが気になりますね。ここ数年の動向はグーグルの台頭やiPodの隆盛で、マイクロソフトが置いてきぼりという状況でした。でも、IEのときもそうですが、マイクロソフトはいつも最後尾から追い抜きをかけるのが得意なんです。先行しているグーグルがマイクロソフトの追撃から逃げ切ることができるのか。その意味で、来年のWindows Vistaの発売は注目しています。