greenz.jp/鈴木菜央編集長

「エコスゴイ未来がやってくる!」をコンセプトに掲げ、2006年の7月に発足したWebコミュニティメディア「greenz.jp」。デザインの力を最大限に活用した環境問題へのアプローチが多方面で話題を集め、今やエコロジーなサイトの代名詞的存在になりました。今回はスタートから丸1年を迎えさらなる飛躍を目指すgreenz.jpの鈴木菜央編集長に、デザインと環境問題についてお話を伺いました。

インタビュー:川崎和哉(Spoo! inc.
テキスト:小林邦昭(Spoo! inc.

▼デザインは未来を提言し、人々の欲望を喚起することもできると思います

川崎greenz.jpのサイトもフリーペーパー「地球の日の歩き方」もそうなんですけど、非常にデザインが良くできていますよね。デザインと環境問題が結びつくということに気づいたきっかけを教えてください。

鈴木:僕は美大に通っていたんですが、そこで学ぶうちにデザインと環境問題が密接にリンクすることがわかったんです。プロダクトデザインという言葉があるように、僕らの身の回りのものってすべてデザインされていますよね。デザインというのは未来を提言することができると思うんです。そして、人々の欲望を喚起するデザインが巷に溢れているように、デザインはパワーを持っていると思います。そのパワーをいい方向に使いたいと考えていました。正直、僕はデザインを手がけるよりもプロデュースしてものを世に送り出す立場の方が向いていると思うんです。僕はそんな自分のことを「世の中を間接的にデザインするソーシャルデザイナー」だと思っています。

川崎:僕自身も、ここ数年でデザインの重要度が高まっているな、と感じることが多いです。そして、環境問題のイメージも昔に比べて大きく変わりましたね。

鈴木:環境問題に取り組むことは特別なことではないんです。格好悪くもないし、辛くもない。みんながハッピーになれば、自分もハッピーになれる。エコな生活を楽しめる人はセンスがあると思います。

川崎:環境問題に取り組むことは楽しい、と鈴木さんが感じるようになったきっかけを教えてください。

鈴木:浪人中に友人に誘われて、ほんとに軽い気持ちで阪神大震災のボランティアに参加したんです。現地はテレビの映像以上にひどく、都市生活のもろさを実感しましたね。そこでは小学校に寝泊まりして、食料の配布や支援物資の管理などをしました。被災地のような極限状態の中では、肩書きが意味をなさなくなり人の本質が出てくるんです。全国からボランティアが集まり見知らぬ者同士で協力して、どうやって効率よく問題を解決するか試行錯誤するうちに、単純に「人間ってすごいな」という実感とともに社会のために何かをするということってめちゃめちゃ楽しいんだな、と思いましたね。そこでの活動がすごく充実していたんで、その後の大学4年間はリハビリ期間のようでしたね(笑)。

川崎:阪神大震災をターニングポイントにして、若者の社会活動への参加が活発になってきましたね。

鈴木:今の若者はボランティアについても「面白そうじゃん」的な、いい意味の軽いノリで参加してるんですよね。最近は若者と年配者が組んで、互いの良いところを引き出し合っていいパートナーになっていると思います。年配者は知識と経験を活かして若者をサポートし、若者は格好いいフライヤーを作ったりイベントを企画したりと、両者がいい具合に接近しています。

▼僕らのデザインやアイディアは、ワクワクできる社会を表すものでないと意味がない

川崎greenz.jpのコピーである「エコスゴイ未来がやってくる!」のコンセプトを教えてください。

鈴木:NPO活動にしても環境活動にしても、少しでもいい未来を作りたいという希望があると思うんです。その一方で、マスメディアには戦争や殺人などネガティブなニュースが多くて、人々の感覚が麻痺してきているように感じます。メディアは人々の集合意識を作り出すこともできるので、僕はもっとポジティブな話をしたいです。たとえば「イタリアでは凧で発電する凧発(たこぱつ)が開発中」とか「ロンドンの2階建てバスはハイブリッドになった」とか「フランスでは空気で走るクルマが開発された」とか聞くと、ワクワクするし前向きになれますよね。海外にはhappynews.comなどがありますが、そこリンクされている「UNHAPPY NEWS」というリンクにはCNNやニューヨークタイムズが貼られているんです(笑)。だから僕の活動も環境破壊についてネガティブな面を見せて危機を煽るのではなく、「こんなにエコで楽しい活動があるんだよ」という感じで知らしめたい。持続可能な社会へのもうひとつの道があることを示したいんです。

川崎:確かに、ネガティブな情報しかないところには行きたくないですね。

鈴木:今は「で、結局どうすりゃいいのよ!」的な気分になるバッドエンディングなメディアが多すぎるので、ハッピーなメディアが1個くらいあってもいいと思います。同じ物事を伝えるにも、言い方ひとつで全然違うんです。エコ活動を「ガンバル若者たち(汗)!」と伝えるよりも、「少しずつだけど、確実に世界を変えているぞ」と言えば希望が出てきます。

川崎:なるほど。それは、表現ひとつで伝え方を変えることができるデザインにも通じる話ですね。greenz.jpの考えるいいデザインを教えてください。

鈴木:僕らのデザインやアイディアは、ワクワクできる社会を表すものでないと意味がないと思っています。極端な話をすると、首都高を自転車専用にするとか、コインパーキングを市民農園にするとか、ほとんどのクルマがてんぷら油やトウモロコシ油で走るとか、スピード最優先ではなく、スローで人間的な社会を目指しています。私も含めて、仕事に追われて子供とふれあう時間が取れない人も大勢いますが、スピードよりもゆとりを優先させたい。生活にアートがあることでゆとりが生まれるんです。家庭菜園を始めたり、子供と遊ぶ時間を持ったり、そんな社会になって欲しい。
greenz.jpの活動は環境問題の解決から始まっていますが、それはわれわれの日々の生活にも繋がっているんです。たとえば、アフリカの環境が改善され、社会的に安定すれば素晴らしい才能を持つ人材が育つ可能性は充分にあると思います。スポーツや音楽で名を馳せた人は数多くいますが、他の分野ではあまりいない気がします。それって、究極のもったいないことであり、アフリカのクリエイティビティーを解放するということは、世界中の人々にとってハッピーなことなんです。環境問題、平和問題、人権問題と分け隔てるのではなく、僕らはすべて同一線上にあると考えています。

川崎:その考え方は、ブログやニュースなどあらゆるジャンルをミックスしているgreenz.jpの構成からも伝わってきます。元雑誌編集者として、鈴木さんが考える紙とWebの大きな違いを教えてください。

鈴木:現在のgreenz.jpをver1とすると、近々の公開を目指してver2の開発を進めています。ver1は雑誌の延長上の構成ですが、ver2では外部の著名なブロガーを巻き込んで面白い記事を書いてもらい、Google マップとのマッシュアップや、ソーシャルブックマークでのトピックス共有も考えています。他にも、外部のブロガーとgreenz.jp編集部がイベント情報を追加していくとユーザーのGoogle カレンダーに追加される機能や、Wikiを用いた21世紀のライフスタイルガイドブックの作成も目指しています。そこでは、環境に優しいエコな生活を送るための情報を載せていく予定です。これらのことはすべてWebにしかできないことです。Webの本質は繋がること、参加することであり、「最新の情報技術で最大限の社会貢献」というのがgreenz.jpのもうひとつのテーマなんです。ここ1、2年で、Webに限らずクリエイターの人たちの環境意識の高まりを感じますが、彼らの素晴らしい才能とエコ活動を結びつけるのが僕らの役割です。

川崎:そういったクリエイターとはどうやって知り合うんですか。

鈴木:大学時代の友人や、greenz.jpのサイトを制作したデザイナー兼松佳宏の繋がりなどいろいろです。兼松も「社会問題をデザインの力で解決する」という僕と共通の理念を持っています。去年、社会問題に関心のあるクリエイターとgreenz.jpでオープン会議を行ったんですが、それが大きな好評を得て新たなムーブメントになりつつあるので今年も同様の場を設ける予定です。Webの世界では莫大なお金儲けをしている人もたくさんいますが、僕らはそれよりも莫大な社会的変化、ハッピーな人が爆発的に増える、そんな世界に向かっていきたいですね。

▼目の前のお金ではなく、お互いがハッピーになれる関係を目指しています

川崎greenz.jpは商用メディアですが、主な収入源を教えてください。

鈴木:運営母体は非営利にするため有限責任事業組合(LLP)で運営しています。現状、greenz.jpだけでは採算は取れていません。Ver2ではこれまで以上に広告に重点を置きたいですね。ユーザーが納得できるよう、タイアップよりは純広メインを考えています。採算の取れていないgreenz.jpを僕らがどうやって運営しているかと言いますと、冊子の編集やライティング、イベントのプロデュース、エコグッズのWebショップ運営等の仕事があるからです。greenz.jpを見たいろいろな企業から声掛けしていただいています。

川崎:環境問題を扱うメディアとして色々な企業の広告を扱うわけですが、たとえば、原発も運営している電力会社から「うちのオール電化製品を取り上げてください」と言われた場合、どのように対応しますか。

鈴木:基本的にgreenz.jpが目指す社会像を理解してくれる企業と組みたいですね。僕らと同一の価値を持っている企業に広告を出して欲しいと思います。いくらお金を積まれてもポリシーが合致しないクライアントの広告は載せません。僕らが目指すのはお互いがハッピーになれる関係であり、雑誌で言えばモノマガジンのように、ものを買うことが大好きな人が読む雑誌に商品の広告がバンバン載っている。そんな構造をエコの世界でも築きたいんです。みんなが楽しく関わって、いつのまにかエコでハッピーな社会ができちゃってる、という構造。僕らは目の前のお金以上に大きい目標がありますから。

川崎:では最後に、鈴木さんの興味があるものを教えてください。

鈴木:CO2ですね。今後数年以内に、平均株価と同じようにCO2が扱われるようになると思います。たとえば、250万円でCO2の排出量が少ない車と150万円でCO2の排出量が多い車があったとして、未来のことを考えたらCO2が少ないクルマのほうが安くつくわけです。地球的には。このようにCO2はお金と同じように商品の価値基準になり得るんです。たとえばテレビ。製造から使用され、廃棄されるまでに排出されるCO2排出を想定してそれと同等の植林をして、出荷されると思います。これはすでに飛行機や不動産などでは始まっています。企業単位でカーボンニュートラルになっているところも出てきていますし、ニュージーランドなんかは国自体がカーボンニュートラルを目指しています。すぐにすべての商品がカーボンニュートラル(CO2を出さない)になると思いますよ。CO2排出量を計算してくれるサイトがあるんですが、そこで質問に答えていくと、あなたは1年間で何トンのCO2を出しています、と出る。あとはクレジットカードでピピピッとやると、「はい、あなたの1年間はカーボンニュートラルです」となります。お金を払って植林をしてもらうことでCO2を相殺することができるんです。これはNPOや企業のの新しいビジネスモデルとして欧米では注目されてきています。国と企業間でもCO2取引が始まっていますが、個人間でもヤフオクとかで「CO2を10トン売ります」みたいなことが始まるでしょうね。まもなく温暖化がホントにやばくなって、CO2削減が個人の義務になるのかも、とも思います。確定申告みたいに「今年カーボンニュートラルにならないよ!どうしよう!」みたいな。なんかとてつもなく儲かりそうなんで、ビジネスできないかなあ、と考える今日この頃です(笑)。
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