羊の木

今年もっとも怖かった一冊がこちら。山上たつひこ原作&いがらしみきお作画というまさかのタッグによる本気の田舎モダン・サスペンス「羊の木」です。

舞台は日本海沿岸のひなびた地方都市。行政は流出した人口を補うべく刑期を終えた元犯罪者の受け入れを断行し、窃盗・傷害・詐欺・放火、はたまた強盗・強姦・殺人・死体遺棄など、さまざまな業を背負った11人がひっそりと町で生活をはじめます。もちろん市民に事実は伏せられたままで、彼らの来歴を知るのは受け入れに携わった一部の関係者のみ。刑務所を出てもなおドス黒いものを抱え続けた人々(全員、顔の味がすごい)は、停滞しきったド田舎のヌルい暮らし(まずそうなラーメン屋の描写がすごい)をズルズルと狂気へひきずりこんでいきます。

元犯罪者や住民たちの内面をごそっとエグる心理の書き方と、土地のにおいまで封じ込める丹念な生活の描き方があいまって、切実さのあまり読み進めるほどに胃がキリキリとしめつけられるような感覚に。原作はすでに完成しているそうなのですが、今のところストーリーの先に救いはまったく見出せず……。次巻はおそらくさらに怖い!
(高橋聡太) 

羊の木(1) (イブニングKC)
いがらし みきお 山上 たつひこ
4063523837

お厚いのがお好き?

ニーチェ「ツァラトゥストラ」、モンテスキュー「法の精神」、福沢諭吉「学問のすすめ」など、学校のテストで点を取るために名前だけは覚えたものの、肝心の中身は1ページたりとも読んだことのないような本が、世の中には山とあります。

かつてフジテレビで放送された「お厚いのがお好き?」は、すさまじいボリュームと小難しいタイトルで読み手を遠ざけ続ける格調高い書物を身近なキーワードで読み解き、笑いながら名著のエッセンスが学べる番組として人気を博しました。今回紹介するのは、2010年に発売された同番組の文庫版。複雑を極める古典の内容を、ラーメン、ダイエット、女子アナといったユルい話題になぞらえて軽妙洒脱に解きほぐしていく手法は実に痛快です。原典への呼び水となるおもしろエピソードも満載なのでブックガイドとしても十分に使えるはず。下巻の「なおかつ、お厚いのがお好き?」もあわせてどうぞ。(高橋聡太)